2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658099
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 義人 茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)
|
Keywords | ゴール / オーキシン / サイトカイニン / シバヤナギ / ハルニレ / ヨモギ / 抵抗性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,昆虫によるゴール形成と植物ホルモンの関連性に関し,オーキシンやサイトカイニンの生合成過程を明らかにすること,また情報伝達の解析や投与実験により,それらがゴール形成に関与していることを明らかにすることを目的としており,本年度は以下のような研究実績を上げた。 1.シバヤナギにハバチが形成するゴールに関して,ハバチがAMPからリボチド型サイトカイニンの生合成能があることを証明した。ハルニレにオカボノクロアブラムシが形成するゴールに関しては,ゴールを形成する幹母にIAA合成能がある一方,ゴール形成後に発生する次世代幼虫からはIAA合成能が検出されなかった。 2.カイコにおける,トリプトファンからインドール酢酸(IAA)への変換において,前年度明らかにしたインドールアセトアルドキシム(IAOx)以外に,インドールアセトアルデヒド(IAAld)も生合成中間体として機能していることを明らかにし,Trp->IAOx->IAAld->IAAの経路を想定した。その一方で,カイコ絹糸腺で見られる酵素活性の予備精製の結果,IAAldを経ないTrp->IAOx->IAAの経路の存在も確認した。IAOxからIAAへの変換を二なる酵素の部分精製を行った。 3.ハルニレのゴールに関しては,ゴール組織ではオーキシンやサイトカイニンによって誘導される負の制御因子が誘導されず,これらのホルモン類の情報が伝達されやすい性状を有する可能性が示唆されるとともに,葉ではジャスモン酸やサリチル酸によって発生が誘導される揮発性物質がゴールでは誘導されず,害虫に対する抵抗性が抑えられている組織である可能性も示された。 4.ヨモギにおける二次壁形成に関与するMYB転写因子やCADリグニン合成酵素遺伝子発現の局在性解析をおこない,ゴールの木質化組織における発現を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホルモン類の分析,生合成など,ゴール形成昆虫の持つ新たな能力が証明され,新たな知見を与えている。カイコを用いた生合成研究も生合成経路に関する情報が集積されている一方で,生合成酵素の精製は進行が遅く難航している。一方,当初予定されていなかったゴールについても,ホルモン類の分析から,オーキシンの生合成能の検出などの結果が得られるとともに,ゴール組織が害虫に対する抵抗性やホルモンに対する応答性が異常になった組織であることを示す興味ある新規な知見が得られつつあり,当初の予定とは想定外の成果が挙がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ゴール形成昆虫における植物ホルモン生合成への共生微生物の関与に関しては,ハバチの処理は困難であることが判明したため,本年度は室内で管理し抗生物質を処理したハルニレをもちい,アブラムシの共生微生物の関与を検討する。カイコを用いたIAAの生合成研究については,酵素活性を維持しつつ精製を進めるための条件の検討を行い,精製を進め,同定を目指す。また,化合物ライブラリーからのIAA合成酵素阻害剤のスクリーニングを視野に入れ,IAA合成の検出をより簡便に行える系の確立を目指す。具体的に葉,FeCL3を用いた発色による検出を検討する。 一方,ハルニレゴールを中心に,オーキシンおよびサイトカイニンのマーカー遺伝子や,各ゴールの組織の特徴を捉えた発現解析をおこない,ゴール形成過程のより詳細な記述を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主にタンパク質の精製,同定や遺伝子のクローニング,発現解析を行うため,試薬等の消耗品に使用する。また,学会発表の際の旅費にも使用する。
|
Research Products
(3 results)