2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト苦味レセプターTAS2Rの遺伝子多型と肝臓解毒酵素発現の個人差の関連性解析
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23658106
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
駒井 三千夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80143022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 仁 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40206280)
後藤 知子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00342783)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒト苦味レセプター / TAS2R / 遺伝子多型 / 苦味感受性個人差 / 苦味物質解毒酵素個人差 |
Research Abstract |
ヒト苦味レセプターTAS2Rの苦味物質リガンド活性に関する研究が、世界的規模で進められている。ジペプチドなどは特有の苦味を有するため食品への利用が制約されているが、優れた機能性を持つため、苦味を低減させることで食品や医療食・調味料等に用い、ヒトの健康維持に役立てることができる。そこで本研究では、ペプチドを含む苦味物質を用いたヒト官能試験により苦味受容能の個人差を調べ、苦味レセプターの一塩基多型と苦味感受性の関連性を先ず明らかにし、最終的には同じ手法でアブラナ科植物の苦味物質の解毒酵素活性の個人差との関係を明らかにしようとしている。 23年度は、苦味物質の官能検査と苦味レセプターの一塩基多型の関連性の研究手法を確立しようとした。苦味物質として、3種類のジペプチドGly-Phe、Gly-Tyr、Ala-Trpと、代表的な苦味物質である6-n-propylthiouracil(PROP)等を用い、gLMS法により苦味強度を評価した。TAS2R遺伝子の解析では、被験者の口腔内粘膜細胞からDNAを調製し、TAS2R1、4、38をPCRにより増幅した。得られたPCR産物を用い、塩基配列を決定した。その結果、TAS2R1は2箇所、TAS2R4も2箇所、TAS2R38は既報通り3箇所でSNPが検出された。TAS2R1では、935番目の位置のSNPにより、2つのtypeに分類された。TAS2R1の935番目の位置のSNP のtype別に苦味強度を調べたところ、CCホモの被験者はC/Tヘテロの被験者に比べ、用いたうちの2種類のジペプチドの苦味強度が有意に低かった。以上のことから、TAS2R4の389番目の位置のSNPは人種間で発生率が異なっているものと推測された。さらにTAS2R4が、あるジペプチドの苦味感受性に、TAS2R1が2種類のジぺプチドの苦味感受性に関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度の検討により、ジペプチドという苦味物質でヒトTAS2Rの一塩基多型解析が可能であることと、苦味ジペプチドでの味官能評価との整合性があることを証明した。すなわち、TAS2R1の935番目のSNPとTAS2R4の2か所のSNPが2種類のジペプチド(未出版のためここでは非公開)の苦味感受性に関与していることを確認できた。さらに、935番目の塩基は細胞内ループ領域に存在する塩基であることから、その位置の変異によりリガンド結合後のGタンパク質の結合性が変わり、苦味強度に影響を与える可能性があると考えられた。TAS2R4において、NCBIのデータベース上でアレル頻度の高い389番目の塩基に変異が見られた被験者は、本解析では1人も見られなかった。つまり、TAS2R4の389番目の塩基置換の頻度は調査の集団(人種)によって異なるものと考えられた。 震災の影響を受けたドクターコースの学生の研究進行の都合で、アブラナ科植物由来のIsothiocyanate類を用いた検討はできなかったが、24年度に実施する予定である。23年度積み残し分の1) Isothiocyanate類の苦味感受性の個人差の解析(味官能評価試験)、2) Isothiocyanate類の苦味レセプターの同定と遺伝子多型(SNP)の解析、3) アブラナ科植物の調理法の違いによるisothiocyanate類の濃度変化と苦味の変化のうち、1)と2)用の実験モデル系ができた段階であり、Isothiocyanate類を用いて、さっそく取りかかる予定である。3)のIsothiocyanate類の調理による濃度変化(苦味受容変化)については8月頃から実施予定である。大学院学生の震災の影響もあった以上のような状況のため、現在までの達成度としては、予定よりも半年ほど遅れている状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の予定であった下記事項も、文献的な探索を終えて、具体化するところまで来ている。しかし、23年度実施分の積み残しを終えてから11月頃からにTAS2Rとほぼ同じ手法で肝臓での代謝処理酵素(GSTM1及びGSTT1)の遺伝子多型の解析に移りたい。すなわち、1) Isothiocyanate類の肝臓代謝処理酵素(GSTM1及びGSTT1)の遺伝子多型解析を行った後に、2) TAS2R38, 44, 45, 49の個人差とGSTM1及びGSTT1の個人差の関連性の解析を行う。 昨年ドイツのMeyerhofらの論文が出され、当所予定していた刺激性をも有する苦味物質であるアブラナ科植物由来の成分(sulforaphane, allylisothiocyanate等)は、候補のTAS2Rファミリーが提案されてきたが、我々は必ずしもそれで決定だとは判断していない。何故ならば、上述の23年度の成果より、TAS2R4などのヒト苦味受容体の一塩基多型は人種間で異なり、欧米人と日本人とでは大きく異なっていることが推察されたためである。また、Meyerhofらの検討はHEK293T細胞にヒトTAS2R遺伝子をトランスフェクションした実験系での検討に過ぎず、我々のヒトの実験系での遺伝子多型を考慮した検討とは言えない。 そこで、これまで我々が予備的に検討してきたジペプチドの苦味を先ずは確定するべく研究を進めた。すなわち、23年度に確立した手法で24年度はアブラナ科由来の苦味物質(Isothiocyanate類)のTAS2Rリガンド活性を調べ、同様の手法で可能な肝臓での代謝処理酵素(GSTM1及びGSTT1)の遺伝子多型の解析に移りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
総額で120万円なので、遺伝子増幅と発現量の解析に要する試薬代とヒト被験者料が大部分となる予定である。その他に分類される機器のレンタル料・投稿料等が残りの経費になる。すなわち、物品費が64万円、旅費6万円、人件費・謝金(被験者料等)が30万円、その他が20万円、となる。機器分析等は既存の装置で行えるので以上の使用計画となる。
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Research Products
(1 results)