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2011 Fiscal Year Research-status Report

ミルクに免疫制御システムは存在するか?

Research Project

Project/Area Number 23658108
Research InstitutionGunma University

Principal Investigator

榎本 淳  群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70183217)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords牛乳 / ペプチド / T細胞 / アレルギー / 自己免疫疾患 / 1型糖尿病 / IL-10 / 免疫抑制剤
Research Abstract

ミルクには未知の免疫抑制因子が存在するのではないかという申請者独自の考えに基づき実験動物を用いて検討したところ、牛乳ラクトパーオキシダーゼ(LPO)が自己免疫疾患やアレルギー疾患の予防や症状緩和に有効である可能性を見出し、それがLPOによる優先的なマウスIL-10産生細胞の誘導効果などによるものであることを明らかにしてきた。本研究では、まず最初にLPOのIL-10産生細胞誘導促進効果に対する牛乳のペプチド画分であるMKFの効果をin vitroで測定したが、興味深いことに、MKFがLPOによるIL-10産生細胞への誘導を完全に抑制できることが見出された。この理由を多方面から検討したところ、MKFがマウスT細胞の抗原特異的な増殖応答や抗CD3抗体刺激による増殖応答を強力に抑制することが明らかとなった。このようなT細胞応答に対するMKFの抑制効果は抗原やMHCの種類に依存することなく、汎用的に認められた。そこで鶏卵アレルギーのモデルマウスであるOVA-IgEマウスの脾臓細胞の抗原特異的なIgE産生応答に及ぼすMKFの効果をin vitroで測定したところ、MKFは主要な鶏卵アレルゲンであるOVA(オボアルブミン)に特異的なIgE応答を完全に抑制した。さらにMKFは1型糖尿病のモデルマウスであるNODマウスの自己抗原(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)に特異的なT細胞応答(1型糖尿病の発症原因となる自己免疫応答)も強力に抑制できることが見出された。T細胞は免疫系を制御する上で中心的な役割を果たしているため、これらの結果はMKFが新規免疫抑制剤として、特に鶏卵アレルギーや1型糖尿病の予防や治療に応用できる可能性を示唆する知見であるといえる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1.本研究の計画段階では、対象として選択した牛乳のペプチド画分であるMKFが免疫賦活活性を有していると想定していたが、本研究を実施した結果、T細胞応答を抗原やMHCの種類に依存することなく、完全に抑制できる免疫抑制剤として有効であることを実験動物レベルで見出した。さらに、代表的な自己免疫疾患である1型糖尿病や最も主要な食物アレルギー疾患である鶏卵アレルギーの予防や治療にMKFが有効である可能性を明らかにした。すなわち、本研究は計画段階と進展方向がやや異なるものの、本研究の目的として設定した我が国における深刻な健康問題の一つであるアレルギーや自己免疫疾患の対策を構築する上で大いに役立つものであり、特にMKFがT細胞をターゲットとしていることが明らかになったことは「①当初の計画以上に進展している」と判断できるものである。
2.当初の研究計画では平成23年度中にMKFの活性成分の同定を終えることを予定していた。MKFには少なくとも10種類以上の牛乳ペプチドが存在しており、現在、HPLCにより20画分に分画し、その1画分のみにT細胞応答抑制活性が存在することを明らかにしているものの、同定にまでは至っていない。この点においては、「③やや遅れている」と判断せざるを得ない。
以上の1および2の状況を総合的に判断して、「②おおむね順調に進展している」と記載した次第である。

Strategy for Future Research Activity

平成23年度の研究成果に基づき、平成24年度の研究の推進方策を次のように設定した。
[1.新規免疫抑制剤の同定] 平成23年度に引き続き、マウスT細胞応答抑制活性を指標として新規免疫抑制剤の同定を試みる。
[2.新規免疫抑制剤の免疫系に及ぼす影響の検討] T細胞応答や抗体応答に及ぼす新規免疫抑制剤の影響に関する実験は平成23年度中に終了したため、サイトカイン応答に及ぼす影響について検討する。BALB/c、OVA-IgE、OVA23-3、NOD、SKGマウスの脾臓細胞にさまざまな濃度の新規免疫抑制剤を加え、1~3日間培養する。培養上清を回収し、Th1系のサイトカインであるIL-12、IFN-γ、Th2系のIL-4、Th17系のIL-6、IL-17、免疫抑制活性を示すIL-10、TGF-βなどのサイトカイン産生量をELISAにより決定し、新規免疫抑制剤により誘導されるサイトカインプロフィールの全貌を明らかにする。
[3.新規免疫抑制剤の鶏卵アレルギー、1型糖尿病、慢性関節リウマチの発症に及ぼす影響の検討] OVA23-3、NOD、SKGマウスに新規免疫抑制剤を経口あるいは腹腔内投与することにより、それぞれ鶏卵アレルギー、1型糖尿病、慢性関節リウマチの発症率や症状に変化が認められるかどうか検討する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度の研究費の使用計画を次のように設定した。
[配分額(直接経費)] 1,400,000円
[使用内訳] 物品費:1,200,000円、旅費:100,000円、人件費・謝金:50,000円、その他:50,000円
本研究を遂行するためには、実験材料として、鶏卵アレルギーのモデル動物であるOVA-IgEマウスおよびOVA23-3マウス、1型糖尿病モデルであるNODマウス、慢性関節リウマチモデルであるSKGマウスなど高価な実験動物が多数、必要となる(これらのマウスの価格は一匹あたり7,000円~30,000円程度である)。さらに実験手法として、さまざまなサイトカインやIgE抗体の定量などのためにELISAなどの方法を駆使しなければならないが、これを実施するためには各種抗体をはじめとする高額な試薬が必要となる(1種類のサイトカインの定量のためのキットは2,000サンプル測定用で約150,000円となる)。これらの点を考慮して、「薬品代」と「実験動物代」に注意を払い、多額な「物品費」を計上した次第である。なお「旅費」は本研究の成果を農芸化学会、免疫学会、食品免疫学会、動物細胞工学会(国際会議)などで発表するためのものであり、さらに本研究の成果を上記学会等が発行している学術誌などに投稿するための経費として、「人件費・謝金」や「その他」を計画した次第である。

  • Research Products

    (2 results)

All Other

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] 自己抗原および牛乳ラクトパーオキシダーゼにより誘導されるIL-10産生細胞

    • Author(s)
      真下和樹、柏木春香、野澤清史、星野早苗、八村敏志、川上浩、榎本淳
    • Organizer
      日本動物細胞工学会2011年度大会
    • Place of Presentation
      東京大学(東京都)
  • [Presentation] 鶏卵アレルゲンに特異的な免疫応答に及ぼすラクトパーオキシダーゼの抑制効果

    • Author(s)
      生方孝明、八村敏志、川上浩、榎本淳
    • Organizer
      日本食品免疫学会2011年度大会
    • Place of Presentation
      東京大学(東京都)

URL: 

Published: 2014-07-24   Modified: 2015-05-28  

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