2012 Fiscal Year Research-status Report
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23658108
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
榎本 淳 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70183217)
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Keywords | 牛乳 / ペプチド / T細胞 / 抗原提示細胞 / 自己免疫疾患 / アレルギー疾患 / サイトカイン / 免疫抑制剤 |
Research Abstract |
ミルクには未知の免疫抑制因子が存在するのではないかという申請者独自の考えに基づき検討した結果、牛乳ペプチド画分であるMKFがマウスT細胞の抗原特異的および抗CD3抗体刺激による増殖応答を抗原やMHCの種類に依存することなく、完全に抑制できることを平成23年度に見出した。そこで平成24年度はナイーブなBALB/cマウス脾臓細胞のサイトカイン応答に及ぼすMKFの抑制効果を検討したところ、LPS刺激により誘導されるIL-6やIL-10応答は全く抑制されないものの、ConAや抗CD3抗体刺激によるIL-4、10、17、IFN-γ応答はMKFの添加により大きく低下することが明らかとなった。このような傾向はBALB/cマウスをあらかじめ主要な鶏卵アレルゲンであるオボアルブミンで免疫した場合にも認められ、それぞれ鶏卵アレルギー、1型糖尿病の動物モデルであるOVA-IgEマウス、NODマウスでも観察された。すなわちMKFはB細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞のサイトカイン応答は抑制できないものの、T細胞のサイトカイン応答は強く抑制できるものと結論づけられた。次にあらかじめNODマウスにMKFを4日間間隔で2回腹腔内投与し、1型糖尿病の発症原因となる自己免疫応答(主要な自己抗原であるグルタミン酸デカルボキシラーゼに特異的なT細胞応答)を測定したところ、それが強力に抑制されることが見出された。さらにMKFを2週間間隔で腹腔内投与し続けたところ、1型糖尿病の発症率がMKF未投与群と比較して低下することが明らかとなった。すなわちMKFの免疫抑制効果はin vitroばかりでなく、in vivoでも有効であることが確認された。これらの平成23~24年度における本研究の成果は、MKFが新規免疫抑制剤として、特に鶏卵アレルギーや1型糖尿病の予防や治療に応用できる可能性を示唆する知見であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の研究の推進方策は1)新規免疫抑制剤の同定、2)新規免疫抑制剤の免疫系に及ぼす影響の検討、3)新規免疫抑制剤の鶏卵アレルギー、1型糖尿病、慢性関節リウマチの発症に及ぼす影響の検討の3点であるため、それぞれについてその達成度を以下に記す。 1)新規免疫抑制剤の同定:平成24年度末時点では新規免疫抑制剤の同定が完了していないため、「③やや遅れている」と判断せざるを得ない。 2)新規免疫抑制剤の免疫系に及ぼす影響の検討:平成24年度は主にサイトカイン応答に及ぼす牛乳ペプチド画分(MKF)の影響を検討することを目的としたが、「9.研究実績の概要」に記載したように、その全貌を解明することができたため、「②おおむね順調に進展している」と判断できる。 3)新規免疫抑制剤の鶏卵アレルギー、1型糖尿病、慢性関節リウマチの発症に及ぼす影響の検討:「9.研究実績の概要」に記したように、1型糖尿病の発症に対する牛乳ペプチド画分(MKF)の抑制効果はin vitroおよびin vivoで確認しており、鶏卵アレルギーの発症に対する抑制効果も少なくともin vitroで有効であることを見出している。慢性関節リウマチに関しては「9.研究実績の概要」には記さなかったものの、MKFがその発症に大きな影響を与えないことを明らかにしている。これらの観点から、「②おおむね順調に進展している」と判断できる。 以上の1)~3)の状況を総合的に判断して、「③やや遅れている」と記載した次第である。このため補助事業期間延長を申請し、それが承認されたため、平成25年度も上記1)新規免疫抑制剤の同定を目的として研究を続行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、平成24年度に「新規免疫抑制剤の同定」が完了しなかったため、平成25年度も研究を続行することとした。 そこで、平成25年度の研究の推進方策を次のように設定した。 1.新規免疫抑制剤の同定 昨年度に引き続き、T細胞応答抑制活性を指標として新規免疫抑制剤の同定を試みる。現在、牛乳ペプチド画分に含まれる各成分の同定はほぼ完了しているため、どれが免疫抑制活性を有する成分であるか決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述したように、平成24年度に「新規免疫抑制剤の同定」が完了しなかったため、平成25年度も研究を続行することとした。 平成25年度の研究推進方策を達成するために、平成25年度の研究費の使用計画を次のように設定した。 [配分額(直接経費)] 297,653円 [使用内訳] 物品費:277,653円、旅費:20,000円 「物品費」は新規免疫抑制剤の同定に必要な試薬や実験動物などを購入するために使用し、「旅費」は本研究の成果を学会で発表するためのものである。
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Research Products
(2 results)