2011 Fiscal Year Research-status Report
食品機能成分による脂質ラフトの機能制御を介した免疫調節
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23658113
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅原 達也 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70378818)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カロテノイド / 脂質ラフト |
Research Abstract |
本研究は、食品機能成分であるカロテノイドによる免疫反応の制御について、脂質ラフトの機能制御の観点から作用メカニズムを解析することを目的とした。 本年度は、マスト細胞の高親和性IgE受容体(FcεRI)、マクロファージのToll様受容体4(TLR4)、B細胞のB細胞受容体(BCR)について、食品機能成分であるカロテノイドが、これらの受容体の脂質ラフトへの移行や免疫応答に与える影響を調べた。肥満細胞のモデルとしてラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3を用い、抗原刺激に伴う脱顆粒反応を評価した。同様にB細胞のモデルとしてヒトバーキットリンパ腫細胞株Ramosを用い、抗BCR抗体刺激に伴うBCRのキャッピング形成を評価した。また、マウスマクロファージ様細胞株RAW264のLPS刺激に伴うNO産生を評価した。受容体の脂質ラフトへの移行は蛍光免疫染色を用いて調べた。 その結果、シフォナキサンチンなど5種類のカロテノイドは、肥満細胞、B細胞、マクロファージの活性化を抑制し、それぞれの受容体の脂質ラフトへの移行を阻害した。一方、いずれの細胞の活性化に対しても影響を与えないカロテノイドやマクロファージの活性化のみを抑制するカロテノイドも確認された。 以上の結果から脂質ラフトを介した免疫担当細胞活性化の抑制作用はカロテノイドの化学構造によって異なることが示され、またカロテノイドによる脂質ラフトを介した受容体応答の抑制機構は細胞の種類によって異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画通り、20種類以上のカロテノイドを精製し、脂質ラフトを介した免疫担当細胞の受容体を介した免疫応答に対する影響を評価した。得られた結果から、応答の抑制と受容体の脂質ラフトへの移行には相関があることが判明し、カロテノイドは構造の違いによって、その活性が異なることも明らかとなった。したがって、本研究の目的を達成するために、本年度の成果は目標をほぼ達成しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の検討から脂質ラフトへの移行阻害が明らかになったものについては、カロテノイドが脂質ラフトそのものの機能に与える影響を解析するために、その構成成分を解析する。前述のように脂質ラフトは、スフィンゴ脂質とコレステロールに富むマイクロドメインである。そこで生化学的手法により調製した脂質ラフトの脂質組成について、研究代表者が以前に確立したHPLC-ELSD による定量解析法(Lipids34, 1231, 1999; J. Oleo. Sci. 59, 509, 2010)とLC-MS/MS による化学構造の解析法(Lipids 45, 451,2010; J. Oleo Sci. 59, 387, 2010)の応用を試みる。 さらに受容体の脂質ラフトへの移行を指標とした免疫制御機能成分の新規スクリーニングアッセイについて、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer, FRET)反応を利用した開発を試みる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103, 8143-8148, 2006)。それぞれ免疫担当細胞を用い、細胞に特異的な受容体と脂質ラフトをドナーとアクセプターの2種類の蛍光色素(5-FAM と5-TAMRA あるいはAlexa Flour532 とQSY7 のペアなど)でラベリングし、蛍光プレートリーダーを用いて、受容体が脂質ラフトに移動したときにFRET 反応によって増強された特定波長の蛍光を検出することで、高感度かつハイスループットに定量する方法を検討する。最適な実験条件を確立し、脂質ラフトを介した免疫機能制御物質の探索へと応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究を推進するにあたり、研究用試薬、培養細胞関連消耗品、実験動物などの研究用消耗品を購入する。また成果発表のための旅費としても使用する。なお、次年度は実験の性質上、比較的高価な試薬(抗体、蛍光標識薬など)が必要となる可能性が生じたため、平成23年度の当初の予算を一部繰り越し、次年度に使用することとした。
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