2012 Fiscal Year Research-status Report
線虫の採餌本能を利用したカロテノイド産生菌からの強力な抗酸化物質の探索法の確立
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23658115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 毅 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (10274143)
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Keywords | カロテノイド / 電離放射線 / 生体防護機構 / 脂質損傷 |
Research Abstract |
当研究の目的はカロテノイド等の生体に対し有用とされる物質の電離放射線などを主体としたストレスに対する生体防護機構を解明し、もって種々のストレスに対する高い生体防護活性を有する物質の探索法の開発に有意義な知見を提供することである。 カロテノイドは脂溶性物質であり、生体内においては細胞膜等脂質部位に局在すると考えられる。このことより、生体内においてカロテノイドは各種ストレスによる細胞膜等に存在する脂質の損傷に対して防護的に機能するという生体防護機構が考えられる。しかし、電離放射線照射による脂質損傷に対する知見は乏しく、さらに電離放射線照射による脂質損傷に対するカロテノイドの影響に関してはほとんど報告がなされていない。 昨年度、基本的生体脂質であるリノレン酸のベンゼン溶液に対しγ線を照射し、リノレン酸の放射線分解生成物であるmalondialdehyde(MDA)の量をTBA(thiobarbituric acid)法により定量し、γ線吸収線量とMDA生成量との線量-効果関係を求めた。今年度はγ線照射による脂質損傷に対するカロテノイドの影響を解析するため、代表的なカロテノイドであるアスタキサンチン存在下、非存在下でリノレン酸に対しγ線を照射し、各実験条件下でのMDA生成量を比較検討した。 その結果、γ線照射によるリノレン酸分解反応に対して特定濃度範囲のアスタキサンチンは抑制的効果を示すことが明らかとなった。これらのことよりカロテノイドは、電離放射線照射による生体脂質分解損傷に対し防護的に機能する可能性が示された。今回得られた結果は、電離放射線等ストレスに対するカロテノイドによる生体防護機構解明、および高い生体防護活性を有する物質の探索に対し有意義な知見を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究の目的はカロテノイド等の生体に対し有用とされる物質の電離放射線などを主体としたストレスに対する生体防護機構を解明し、もって種々のストレスに対する高い生体防護活性を有する物質の探索法の開発に有意義な知見を提供することである。 本年度はγ線照射による生体脂質分解反応に対する代表的カロテノイドであるアスタキサンチンの効果を明らかとした。この結果は、電離放射線等ストレスに対するカロテノイドによる生体防護機構解明、および高い生体防護活性を有する物質の探索に対し有意義な知見を与えると考えられ、研究は当初目的に照らしおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
電離放射線照射による代表的な脂質損傷として、脂質分解損傷に加えて脂質過酸化損傷が挙げられる。そこで、主要生体脂質であるリノレン酸の有機溶媒溶液へ様々な線量のγ線を照射した後、共役ジエン測定法により脂質過酸化量を測定し、γ線吸収線量と脂質過酸化量との線量-効果関係を求める。また、γ線照射による脂質過酸化損傷に対するカロテノイドの影響を解析するため、β-カロテンおよびアスタキサンチン存在下、非存在下で同様の実験を行い結果を比較検討する。電離放射線照射による脂質損傷過程において、脂質過酸化反応と脂質分解反応は異なった反応過程を経て起こると考えられる。このため、γ線照射による脂質過酸化反応および脂質分解反応に対する各種カロテノイドの影響を比較することにより、電離放射線照射による脂質損傷に対するカロテノイドの影響の作用機序を解析することが可能となると考える。 また、高い生体防護活性を有するカロテノイドの探索の基礎情報を得るため、複数種のカロテノイド産生細菌のカロテノイド産生株、非産生株に対しγ線照射を行いその生存率を解析することにより、放射線に対する防護機構に寄与するカロテノイド、および機能性食品として有用である乳酸菌等の細菌の候補をスクリーニングする。そして、それら細菌のカロテノイド産生株、非産生株の性状を比較することにより得られるデーター、およびin vitroの実験系で得られるカロテノイドの電離放射線に対する防護効果に関するデーターを統合することにより、高い生体防護活性を有する物質の探索、および抗酸化機能性食品開発に対して有益な情報を提供する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は昨年度の研究の延長として、γ線照射による脂質分解損傷に対する昨年度とは異なったカロテノイドの影響に関する研究を行った。この研究遂行に必要な物品はすでに昨年度購入しており、今年度は当初計画よりも支出額が少額でも遂行することが可能であった。次年度は本年度までに得られた知見に加えて、新たに脂質過酸化損傷に対する複数のカロテノイドの影響を解析することを計画している。さらに、カロテノイド産生細菌のカロテノイド産生株、非産生株を用い、γ線照射による各種カロテノイドによる生体防護機構の解明を目指して研究を行う予定である。これらの研究を遂行するため、次年度の研究費はin vitroの実験系におけるカロテノイドによる脂質過酸化損傷に対する影響解析のための試薬に加え、各種細菌の放射線抵抗性解析実験のための試薬、および細菌培養のための試薬、さらに全ての実験に必要なプラスチック器具、ガラス器具の購入に用いる。さらに、研究成果発表、情報収集に必要な旅費等にも使用する。
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Research Products
(2 results)