2011 Fiscal Year Research-status Report
気候温暖化が晩霜害を介してブナの成長と分布に及ぼす影響の解明
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23658120
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
石田 清 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10343790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 克彦 秋田県立大学, 付置研究所, 教授 (50264099)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 晩霜害 / ブナ / 成長 / 開葉期最低気温 / 年輪幅 / 気象データ |
Research Abstract |
晩霜害がブナの成長に及ぼす影響を推定するため、北東北に位置する八甲田山の3地点でブナの開芽日を決める積算温量を測定するとともに、この値とアメダスの過去の気象データを用いた分析を行い、1978年以降の各年におけるブナ開芽日以降の春期の最低気温(以下、「開葉期最低気温」という)を地点ごとに推定した。この各年・各地点における開葉期最低気温と年輪幅の関係を分析した結果、冷気が溜まりやすい山間盆地(田代平)に位置する2地点で開葉期最低気温と年輪幅の間に有意な正の相関が認められた。一方、山腹に位置する1地点では、これらの値の間に有意な相関は認められなかった。さらに、開芽日に大きな個体間変異が認められた1地点について、ブナを開芽が早いグループと遅いグループに分割して同様の分析を行った。その結果、開芽の遅いグループで開葉期最低気温と年輪幅の間に有意な正の相関が認められた一方で、開芽の早いグループでは明瞭な相関は認められなかった。これらの分析により、(1)冷気が溜まりやすい山間盆地で晩霜害によるブナの成長量減少が起こりやすいこと、(2)晩霜害がブナの成長に及ぼす影響は、開芽が早い個体と遅い個体で異なり、後者で晩霜害の影響を大きく受ける傾向があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
八甲田山において、過去の気象要素と年輪幅との関係を分析することにより、晩霜害がブナの成長に及ぼす影響を推定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
八甲田山において調査地点を増やし、過去の気象要素とブナの年輪幅との関係を分析する。さらに、近年に晩霜害が発生した地点において、晩霜害が木部組織に及ぼす影響を細胞レベルで分析する。この分析により、晩霜害発生年のみに生じる木部組織の特徴を明らかにし、これに基づいて気象データが得られない年代(1977年以前)における晩霜害の発生傾向を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ブナの木部コアサンプルの採取に必要な野外調査機材、年輪分析に必要なx線撮影用フィルム及び試薬・プラスチック器具、生育環境の把握に必要な環境測定機器、調査地に移動するための旅費などに研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)