2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23658127
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 直紀 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (40335302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清野 達之 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40362420)
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Keywords | 熱帯樹木 / 形成層マーキング / 高電圧パルス |
Research Abstract |
タイおよびマレーシアの熱帯樹木について高電圧パルスによる形成層マーキングをほどこした試料を採取し、顕微鏡による観察を行った。高電圧パルスの効果は樹種と処理時期によって異なり、日本国内で観察したのと同様の変化を木部組織にみとめた。300Vの電圧では光学顕微鏡によってマーキングを確認出来ない樹種があり、特に比重の大きい材をもつ樹種では高電圧処理の影響が小さい傾向があった。500Vの電圧では多くの樹種に異常組織の形成が見られたが、その影響はやはり樹種ごとに違いがあった。高電圧パルスによって形成される木部の異常組織は、ひしゃげた道管、薄壁の木部繊維、放射組織の細胞列の増加と異形の放射柔細胞、異形の軸方向柔細胞、細胞内の沈着物であった。これらの異常組織は温帯樹木において観察されたものと同様で、熱帯樹木においても高電圧処理の効果に違いはないと考えられた。道管と木部繊維に見られた変化は、高電圧処理によって細胞壁形成が停止した結果と考えられた。柔細胞での変化は、高電圧処理によって細胞が死ぬことはなかったものの、それ以後の細胞の成長が正常に行われなかったものと考えられた。これら異常組織の形成は半径方向で1mm未満の範囲に収まっていて、それ以降は再び通常の木部形成が行われていた。タイの熱帯季節林で行った高電圧パルスマーキングの効果は処理時期によって違いが見られた。すなわち、乾季に行った処理に比べ、雨季に行った処理では異常組織の形成がより顕著であった。木部形成の盛んな時期のほうが成長途上の細胞の数が多く、処理の影響をうける細胞の数が多くなることがその原因であると推定される。高電圧処理による異常組織の形成は、従来のナイフマーキングによる手法に比べて異常組織形成の範囲が小さく、木部でのマーキングの位置をより明確に特定できると言う点で優れていると言える。
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Research Products
(2 results)