2011 Fiscal Year Research-status Report
樹皮内生菌における宿主樹木の後天的防御機構への貢献に関する研究
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23658134
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70391183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 優 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (10353583)
佐橋 憲生 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 室長 (10202102)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 樹皮 / 内生菌 / 胴枯病菌 / アカマツ / コナラ / ミズナラ / ブナ |
Research Abstract |
本研究では樹木の樹皮内生菌の多様性と宿主に対する適応的意義を明らかにすることを目的に、種類相、出現頻度、病原力、他菌に対する拮抗作用を調査した。 当該年度は全国4か所でアカマツ、コナラ、ミズナラ、ブナの小枝の樹皮に内生する糸状菌の多様性を調査した。その結果、場所や樹種によって種類相が全く異なることが明らかとなった。特質すべき種類として、つくば市のアカマツからのみSphaeropsis sapineaが高頻度に検出された。この種類は世界各国でマツの重要病害として知られているが、日本では分布は確認されていたものの、樹皮内生菌として優占する種類とは考えられていなかった。また京都では各樹種で木質分解能が高い腐生性のXylarialesが比較的高頻度に分離された。この傾向は他地域では認められなかったものであり、その理由については不明である。またミズナラからのみColpoma属菌が高頻度に検出された。同じ属の樹種であるコナラからは全く検出されていない種類であった。さらには分離の際に強い拮抗作用が認められたことから、本種は他菌に対して排他的能力が高いと予想された。 全体的にみて胴枯性病害として知られるDiaporthales、寄生菌、内生菌として知られるRhytismatalesが優占していた。この結果は比較的世界的に報告例が少ない樹皮内生菌相解明において重要な知見である。また、場所や樹種によって種類相が異なるといった地域比較に関する報告例も少ない。本研究は樹皮内生菌の分布パターンや宿主特異性を考える上で重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標通り、各地から樹皮内生菌の多様性調査を行い、成果をあげた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続き各地の試料より樹皮内生菌の分離、多様性調査を行うとともに、調査の際に検出した拮抗能力を有する菌株に関して、対峙培養により排他的能力を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多様性調査に際し、菌株の収集にかかる旅費、DNA解析、化学分析、培養等にかかる消耗品費として研究費を使用する予定である。
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