2011 Fiscal Year Research-status Report
荒砥沢地すべりの圧密されたシルト岩における超低勾配・長距離すべりの機構解明
Project/Area Number |
23658136
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
岡田 康彦 独立行政法人森林総合研究所, 水土保全研究領域, 主任研究員 (50360376)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 地すべり |
Research Abstract |
岩手・宮城内陸地震により発生した荒砥沢地すべりは、相当の高応力で圧密された細粒のシルト岩において、傾斜が推定で4度以下のすべり面を300m以上運動した。この超低勾配・長距離運動は、通常の地すべりの運動としては解釈が困難であり、土質力学的に詳細な検討を加えてメカニズムの解明を目指す。 荒砥沢地すべりのすべり面近傍より採取されたボーリングコア試料は、地下100m程度の深さに存在したとは想像すらできないほど脆弱な構造を有し、指で触れただけでぼろぼろと破壊してしまうことがわかった。この試料を対象にした土質せん断試験を実施するにあたり部位の選定を行った他、液体窒素により凍結させて実験室に持ち帰るための手法を完成させた。また、地すべりの滑落崖の背後で採取されたボーリングコア試料は、地すべりが発生した地層と同じ材料を含み、かつ、運動が生じていないものと推定されることから、こちらに関してもせん断試験対象箇所を絞った。 研究代表者の所属する研究所に既存の一面せん断型直接せん断試験機は、供試体に載荷可能な垂直応力が500kPaと小さく、また、供試体は方形に作成する必要があった。一方、荒砥沢地すべりのすべり面は深さが100m程度と深いため垂直応力は1.6MPa程度が必要となる。また、すべり面からサンプリングしたボーリングコア試料は円柱状であることから、円柱状の供試体をせん断可能とするせん断装置が必要となる。そこで、円柱状の供試体(直径0.05m)を対象としたせん断装置に改造した。また拘束応力については、供試体の垂直応力載荷面積を小さくすることにより1.6MPaの高垂直応力載荷を可能とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩手・宮城内陸地震により生じた荒砥沢地すべりは、長さ1.3km、幅が0.9km、すべり面の深さが約0.1kmと国内最大級であり、研究対象としては多くの困難を伴う。深さ0.1km程度のすべり面に存在し高応力下であったにも関わらず手で触れるだけでぼろぼろと破壊するようなボーリングコア試料を対象に、また、地すべりの滑落崖の背後における同等の試料を対象に、試験用の供試体を選定した。 高応力下(1.6MPa)での直接せん断が可能となる一面せん断試験機を改造し、また、凍結試料の構造を観察・把握可能なクライオ-SEMを稼働させており、研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
荒砥沢地すべり地内に保存されているボーリングコア試料を対象に、液体窒素を用いて凍結サンプリングする。研究所に持ち帰り適宜トリミングなどの処理を行った後、一面せん断型の直接せん断試験機に供し力学的な挙動を詳細に追跡する。また、クライオ-SEMを用いて土粒子の骨格構造を精密に観察し、高応力下で圧密された細粒のシルト岩内部で発生した超低勾配のすべり面を有する荒砥沢地すべりの運動機構を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
荒砥沢地すべり地内に保存されているボーリングコア試料の採取調査を目的に、宮城県栗原市への複数回の出張を計画している。また、1.6MPaもの高応力下での土質せん断試験では、各種測定機器の調整・再較正の実施を計画している。クライオ-SEMを用いた観察調査に関して、液体窒素の購入を計画している。
|