2012 Fiscal Year Annual Research Report
荒砥沢地すべりの圧密されたシルト岩における超低勾配・長距離すべりの機構解明
Project/Area Number |
23658136
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
岡田 康彦 独立行政法人森林総合研究所, 水土保全研究領域, 主任研究員 (50360376)
|
Keywords | 崩壊・地すべり・土石流 |
Research Abstract |
平成20年の岩手・宮城内陸地震で生じた国内最大級の荒砥沢地すべりで認められた超低勾配・長距離すべりの機構の解明を目指し、低温走査電子顕微鏡(クライオ-SEM)を用いた微細な土粒子骨格構造調査を行った。 荒砥沢地すべりは、そのすべり面深度が100mと深いことのほかに、その勾配が4度程度以下とほぼ水平であるにもかかわらず、300m超もの長距離を運動したことが大きな特徴である。この特徴は、地すべり研究者にとっても驚愕の事実であり、土粒子骨格構造の調査、検討を加えてメカニズムの一端でも解明することが必要不可欠であった。 地すべり地内外で実施されたボーリングコアの不撹乱試料に対し、液体窒素を用いて凍結させた供試体を対象に、低温走査電子顕微鏡を用いて微細な土粒子骨格構造を調査した。その結果、地すべりのすべり面を形成したと考えられているシルト岩では、円筒状や格子形状の粒子が多数確認できた。一方、シルト岩の上位に位置した凝灰岩については、そのような形状の粒子の確認はできなかった。従来、細粒の土粒子が堆積してできたシルト岩では、地すべりが低勾配の斜面を長距離運動することは想定しづらいとされてきた。しかし、低温走査電子顕微鏡による観察調査によりシルト岩中に認められた円筒状や格子形状の粒子が、地震動に伴うせん断を受けて破砕・粉砕されることにより構造が変化し、内部の間隙圧が上昇するようなことが生じればすべり面近傍で液状化現象に近い状態が再現され、低勾配斜面を長距離運動する可能性があることを示した。
|