2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞壁におけるリグニンの存在形態-形状、大きさ、分布-に関するナノレベル分析法
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23658140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 雄二 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30183619)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / π-π相互作用 / リグニン / 樹木 / 細胞壁 / シリンギル / グアイアイシル |
Research Abstract |
本研究は、リグニン芳香核と特異的にコンプレックスを作りえる化合物を原子間力顕微鏡の探針上に何らかの形で結合させ、その探針を装着した原子間力顕微鏡によって細胞壁を観測し、リグニンの存在状態についてナノレベルで可視化しようとするものである。この研究は次の4つのステップからなる。(1) リグニン芳香核との間に強い相互作用を有する化合物の探索 (2) そのような化合物の探針への結合法の開発 (3) 原子間力顕微鏡に装着した探針による細胞壁表面の観察このうち、本年度は「(1) リグニン芳香核との間に強い相互作用を有する化合物の探索」に取り組んだ。芳香核構造のタイプとして、α-カルボニルを有するグアイアシル核およびシリンギル核、α-カルボニルを有さないグアイアシル核およびシリンギル核の4つを想定し、さらに、それぞれについてフェノール性のもの、非フェノール性のものがありえることを考えて、これら合計8タイプの芳香核構造のモデル化合物を用いて、テトラシアノエチレンなどの非常に電子密度の低いπ結合系を有する化合物との間の相互作用を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リグニン芳香核の多様性に対応して、π-πコンプレックスを形成する相手方となる化合物の探索を、当初の予定の枠を大きく超えて、行う事ができた。このことにより、細胞壁におけるリグニンの存在形態をナノレベルで観測するという本研究の狙いにとどまらず、リグニン化学構造の違いを含めた分布状態についての情報を得ることができる可能性が開けた。しかし、その反面、探針へのこれら化合物の結合法については、その多くを24年度に持ち越すことになった。これらの理由により、おおむね順調に推移していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に探索した化合物を原子間力顕微鏡の探針上に何らかの方法により結合させ、細胞壁を観測する。また、観測した対象が、細胞壁のオリジナルの状態を反映しているかどうか、様々な試料調製法を試みることを通じて、深く検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
原子間力顕微鏡自体は研究室で保有しているため、単価が50万以上の物品費は必要ないと予想している。ほとんどを、消耗品費および、研究成果の発表や当該分野の研究状況について調査・討論するための出張旅費として用いる。
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Research Products
(3 results)