2011 Fiscal Year Research-status Report
吸着金属をプローブとするSEM/EDX法による木材通水組織のリグニンの可視化
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23658148
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
久保 智史 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (50399375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 克史 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (90399379)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リグニン分布 / FE-SEM/EDX / 木材組織 / 金属イオン |
Research Abstract |
木材細胞壁の主要構成分の一つであるリグニンには金属イオンを吸着する特性があることが知られている。このリグニンによる金属イオン吸着を利用して、FE-SEM/EDX分析で、木材組織に極力ダメージを与えない穏和な方法で、木材組織上のリグニンの分布の可視化が可能であるかの検討を行った。金属塩水溶液中にスギ材切片を浸漬した後に、イオン交換水で十分に洗浄し、減圧乾燥するこという簡便な手法で分析試料の調製を行った。金属イオンを吸着させた木材試料のFE-SEM/EDX分析の結果、マップ分析の画像イメージから、木材組織上での吸着金属イオンの分布は不均一であり、細胞間層及び一次壁では二次壁に比べてより高密度で金属イオンが吸着されていることが明らかになった。木材細胞中のリグニンの分布密度は、細胞間層で高く二次壁では細胞間層に比べて低いことが知られていることから、FE-SEM/EDX分析で、木材組織上のリグニンの分布が簡単に可視化できる可能性が示された。また、二価の鉛イオンを吸着させたスギ材切片のFE-SEM/EDXによるライン分析では、細胞壁上での金属イオンの分布がUV顕微鏡などで報告されている細胞壁中でのリグニンの分布と比較できることが明らかになった。木材細胞中のリグニンの分布はUV顕微鏡分析の他に、化学染色法、臭素化法などにより検討されているが、本課題で開発した方法は、金属塩水溶液に浸漬するのみである。このことから、既存の方法に比べて、試料への化学的なダメージを軽減した高解像度での分析の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災により研究所共用機器であるSEM/EDXが使えなくなった。年度初めには、7月までには修理が完了するとの見積もりであり、研究には大きな支障が出ないと判断していた。しかしその後に、当該機器の部品を生産している工場の再稼働が大きく遅れる結果となり、修理完了が12月にずれ込んだ。この影響で十分な分析時間を確保することができなくなり実験計画に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に十分な分析時間が得られなかったFE-SEM/EDXを使用する課題に関しては、金属イオン吸着木材試料に極力ダメージを与えない分析条件を明らかにする。また本年度の吸着実験に加えて、木材細胞壁中に存在し、且つ金属イオンを吸着する可能性があるグルコマンナン、キシラン誘導体(アセチル化、メチル化)を化学合成し、各種金属イオンの吸着試験を行い、FE-SEM/EDXによるリグニン分布の可視化に適する金属イオン種を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に、FE-SEM/EDX分析に十分な時間が得られなかったことから、そのために計上していた物品購入予算を平成24年度に繰り越した。実験計画に遅れはあるが、研究の方向性には変更がない。平成23年度に達成出来なかった研究に関しては平成24年度に行う予定であるために、繰越金はそこで必要となる物品購入費に充てる。
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