吸着金属をプローブとするＳＥＭ／ＥＤＸ法による木材通水組織のリグニンの可視化

2013 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 23658148
• Research Institution: Forestry and Forest Products Research Institute
• Principal Investigator: 久保 智史 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (50399375)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 黒田 克史 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (90399379)
• Keywords: 木材 / 金属イオン / SEM-EDX / Nano-SIMS

Research Abstract

本研究では、金属の塩化物塩、硝酸塩水溶液に木材試料片を浸漬し、木材試料に吸着した金属イオンの分布をEDXで検出し可視化する方法を試みている。前年度までの結果では、金属塩浸漬段階での金属塩溶液の酸性化と、吸着金属イオンが低濃度であった場合のEDX分析条件下での試料の分解が問題となっていた。試料溶液の酸性化による問題を解決のために、今年度は、希薄金属塩溶液中および酢酸バッファー中で金属イオンを吸着させた木材試料片のSEM-EDX分析を行ったが、試料の分解を抑えた条件でのマッピング分析は達成できなかった。また酸性条件に代わり希アルカリ条件下でSEM-EDX測定により適した金属イオンをリグニンに選択的に吸着させる方法の検討も行った。その結果、単離リグニンの希アルカリ水溶液にニッケル塩を添加する事で、アルカリ条件化でもリグニンがニッケルイオンと強く吸着し不溶化することを見いだした。昨年度までのSEM-EDX測定で検出感度が高かった鉛イオンでも同様に、アルカリ条件化でリグニンと選択的に強く吸着する塩を見いだすことができれば、高感度で木材試料の分解を抑えたマッピング分析が行える可能性があると期待している。EDX分析中の試料の分解を抑えるために、より低濃度で木材に吸着した金属塩を高感度で検出する方法として、新たにNano-SIMSの利用を検討した。Nano-SIMSによる観察では、希薄塩化鉄水溶液で処理した木材試料でも、細胞壁中の鉄イオンの分布を可視化することができた。また、三価の鉄イオンを担持させた木材試料のNano-SIMS分析では、鉄イオンの分布が２次壁に比べてセルコーナー、細胞間層で高く、リグニンの分布と比較できる結果が得られた。