2012 Fiscal Year Research-status Report
超雄・超雌作製と早期性判別を実現するための性連鎖DNA配列段階的同定法の確立
Project/Area Number |
23658153
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井尻 成保 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (90425421)
|
Keywords | 性統御 / ティラピア |
Research Abstract |
本研究では、魚類の性連鎖DNA配列を同定する方法の確立を目指し、ゲノムサイズが比較的小さいナイルティラピアで技術的検討を行っている。この研究分野では、この2年間で大きな進展があった。まず、トラフグの性はDNAの1塩基多型によって決定されるという報告があり、また、ニジマス遺伝的雄(XY)と雌(XX)の未分化生殖腺のRNA-seq(発現RNAの包括的解析)の比較によって性連鎖DNA配列を特定したという報告があった。対象魚種が1塩基多型のような微小なDNAの雌雄差による性決定機構であった場合、ゲノムサブトラクションからの性連鎖DNA特定は技術的に不可能である。従って、平行してニジマスで実施された未分化生殖腺のRNA-seqからの同定法も試行している。 ゲノムサブトラクション法の検討については、サブトラクション後のAFLP解析からは親世代から子世代に亘って組換えを生じない性連鎖DNA配列は特定できなかったため、次世代シーケンサー(NGS)による解析を試行している。 未分化生殖腺のRNA-seq解析に関しては、用いるサンプルの検討を行った。これまで未分化生殖腺において、濾胞刺激ホルモン受容体(Fshr)遺伝子が孵化後6日目から性的2型性発現を示すことが解った。このことから、孵化後4および5日目のXXまたはXYの未分化生殖腺からRNAを抽出し、Illumina社のHiSeq2000によってシーケンスした。その結果、XXからは平均97bで45,758,757リード数、XYからは平均97bで44,172,448リード数、合わせて8,695Mbの塩基配列が得られた。これらをアセンブルし、N50長400bの446,533コンティグが構築され、151Mbの総塩基配列が得られた。コンティグに対しそれぞれのサンプル由来のリード数カウントを行い、約10万のXY特異的発現配列が選抜された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲノムサブトラクションサンプルのNGS解析が遅れている。予定卵巣と予定精巣のRNA-seq解析および、XX、XY、超雄(YY)魚の作製とそれらDNAサンプルの準備は計画通り進んでいる。 ゲノムサブトラクションによるアプローチは、AFLP解析から撤退しNGS解析のみで実施することにしたが、AFLP解析に用いるゲノムサブトラクション法ではライブラリーサイズが短すぎるという問題が生じた。そのため、NGS解析用のサブトラクション法を検討しており、計画より進行が遅れている。 RNA-seq解析によるアプローチでは、未分化生殖腺における遺伝子発現の性的2型性が生じる時期を慎重に見極めるため、新たにFshrを指標に加えて再検討を行った。その結果、孵化後4日目の未分化生殖腺を単独に用いるのは性的2型性が全く現れていない危険性があると判断され、4日目と5日目のサンプルを混合して使用する方が、性特異的発現配列が得られる可能性が高いと判断された。しかし、孵化後4日目の稚魚から可能な限り純粋な未分化生殖腺を摘出するにはかなりの技術的訓練を要したことから想定していたよりも時間が費やされることになった。その後、微量RNAからのNGS解析用cDNAライブラリー作製は順調に進み、HiSeq2000によるシーケンスからも良好なリード長とリード数が得られた。コンティグ作製とそれぞれ遺伝的雌雄サンプル間のリードカウントも完了した。 偽雌(XY)と超雄(YY)をかけあわせた群、および通常雌(XX)と通常雄(XY)をかけあわせた群において、性判別を行った個体のDNAを多数調整した。これらスクリーニング用のDNAサンプルの準備は計画通り進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
NGS解析に適するゲノムサブトラクションライブラリーを作製する。AFLP解析に使用したライブラリーではcDNA長が短すぎるため、ライブラリー作製時のNGS解析に適する制限酵素の組合せを検討する。作製したライブラリーをNGSで解析し、YYからXXゲノムをサブトラクションしたライブラリーにおいて濃縮される配列を探索する。濃縮された配列については定量PCR用プライマーを設計する。 未分化生殖腺遺伝的雌雄間のRNA-seqのリードカウントにおいて遺伝的雄でのみリードが存在する配列についてブラスト検索する。翻訳領域をコードしていると判断される配列について定量PCR用プライマーを設計する。 既に調整したスクリーニング用DNAサンプルにおいて上記設計したプライマーを用いて定量PCR解析を行ない、雄に連鎖する配列を特定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度未使用分の研究費は、未分化生殖腺遺伝的雌雄間のRNA-seqから選別された遺伝的雄特異的配列に対するプライマー作製に使用する。その他、実験魚飼育関連物品、分子生物学実験に用いる試薬、研究成果の発表に関わる旅費として使用予定である。
|