2013 Fiscal Year Research-status Report
超雄・超雌作製と早期性判別を実現するための性連鎖DNA配列段階的同定法の確立
Project/Area Number |
23658153
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井尻 成保 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (90425421)
|
Keywords | ティラピア / 性統御 |
Research Abstract |
昨年度、遺伝的雄(XY)または雌(XX)それぞれの孵化後4及び5日目の未分化生殖腺混合サンプルを材料にHiseq2000によるRNAシーケンスを行い、約10万のXY特異的cDNA配列を選抜した。しかし、それ以上に候補配列を絞り込む手段がなく、さらに解析サンプルを増やす必要があると考えた。 今年度は、未分化生殖腺における性分化関連遺伝子の発現量差を精査し、孵化後4日目には既に遺伝的雌雄間で分子的性分化が生じることを明らかにした。このことから、孵化後4日目の未分化生殖腺のみを用いてシーケンスを行うことで、分子的性分化を決定づけるより上流遺伝子の候補を絞り込むことができると考えた。 XXまたはXY仔魚から孵化後4日目の未分化生殖腺を極力他組織の混入のないように摘出し、それらからtotal RNAを抽出した。抽出したRNAはオリゴdTプライマーを用いてcDNAに転換し、増幅した後にIonPGMにてシーケンスを行った。その結果、XXおよびXY未分化生殖腺からそれぞれ、240万および310万リードのリードが得られた。 昨年度のHiseq2000で得られたリードと供に混合アッセンブリーを行い、それぞれのコンティグにリードマッピングを行った。先ず、これまでに得られている全てのXX未分化生殖腺由来のリードにマッピングされたコンティグを排除した。残ったコンティグに対して孵化後4日目および5日目のXXまたはXY未分化生殖腺由来のリードをマッピングし、XY由来のリードに特異的にマッピングされるコンティグとして2328のcDNA配列が選抜された。 以上、孵化後4日目の未分化生殖腺の新規シーケンスと、新たに考案したコンティグ選抜方法により、遺伝的雄特異的発現cDNA配列として昨年度の約10万から2328コンティグへと、候補配列を大幅に絞り込むことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ゲノムサブトラクションサンプルの調製が予定通り進んでいない。その一方で、未分化生殖腺における発現遺伝子解析は順調に進んでいる。ここ数年で次世代シーケンサーを利用したRNAシーケンスの技術が進歩したため、特にこちらに重点を置いての性特異的配列の絞り込みを進めている。昨年度の孵化後4,5日目の未分化生殖腺混合サンプルのRNAシーケンスに加え、さらに孵化後4日目の遺伝的雌雄それぞれの未分化生殖腺のRNAシーケンスに成功した。それによって、未分化生殖腺におけるXY特異的発現候補配列は2328コンティグにまで選抜が進んだ。この配列の中からアノテーションのついたものから順に、通常雌(XX)、超雄(YY)および通常雄(XY)とそのF1世代のゲノムライブラリーを用いて、選抜された配列の有無をスクリーニングする必要がある。しかし、昨年度、YYが飼育事故のため全て死亡したためスクリーニング用のゲノムライブラリーの調製が滞っている。新たなYY魚作製には時間がかかったため一旦実験を中断せざるを得ず、研究計画が遅れる原因となった。そのため、達成度は遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在選抜されている遺伝的雄特異的候補cDNA配列2328コンティグのアノテーションを進める。アノテーションが付いた配列から順次定量PCR用の特異的オリゴDNAプライマーを設計する。 超雄(YY)魚は既に作製された。通常雌(XX)にYY雄または通常雄(XY)を掛け合わせて、それぞれの性判別を行ったF1世代のゲノムライブラリーの作製を引き続き進める。 遺伝的雄特異的候補cDNA配列特異的オリゴDNAプライマーを用いて、ゲノムライブラリーを材料にして定量PCRを行う。XXに存在せず、YYに2コピー、XYに1コピー存在する配列を検索する。 F1のXX雌とXY雄の間でF2世代を作製し、性判別を行い、そのゲノムライブラリーを作製する。上段でY特異的配列が同定されればF2のゲノムライブラリーにおいてもY特異性を検定する。 XY雌とYY雄から得られる仔魚をエストロゲン処理によって雌化誘導し、Y特異的DNA配列が同定されればその配列を指標として、超雄偽雌(YY雌)を選抜する。YY雌とYY雄を掛け合わせ、全超雄生産が可能かどうか検定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度中に性連鎖DNA配列候補群の選抜を終えたが、検定するための試料となるティラピア全雄群を作製するための精子提供雄親(超雄:YY魚)が、H25年5月に飼育事故のため全て死亡した。その後、YY魚を作製しているが今年度中に検定試料用の全雄群を用意することができず実験が停滞した。また、遺伝的雄特異的候補cDNA配列の選抜にも予想以上に時間を要している。そのため、検定用のオリゴDNAプライマー作製費の未使用が発生した。 雄親魚(超雄:YY魚)の事故死によって全雄群DNA試料の準備に時間がかかっているため、その間、さらに性連鎖DNA配列候補群の選定を再検定した上で、オリゴDNAプライマーの設計をおこなう。次年度には、設計を終えたオリゴDNAプライマーを作製し、性連鎖DNA配列候補群の検定をおこなう。昨年度未使用額は本年度オリゴDNAプライマー作製に使用する。
|