2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658161
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Keywords | 社会行動 / 遺伝子 / イカ / タコ / 水産資源 |
Research Abstract |
本研究では、発達した感覚・神経系を持ち、群れという機能的な社会システムを作るイカ類の行動の個体差、すなわち個性に注目し、その背景となる遺伝子の探索を目指す。「海の霊長類」と称されるイカ類について、その複雑で発達した社会システムを「個性」という観点から詳らかにする。遺伝子型が選抜指標となれば、資源管理や養殖技術開発、水族館学に多大な貢献が期待される。これまでに行った、遺伝子解析および行動評価の条件検討にもとづき、24年度は、行動評価データのあるアオリイカ多数個体の遺伝子型判定を主として行い、ホタルイカ、スルメイカとも比較した。 アオリイカは、沖縄島由来の飼育集団(25個体)と長崎県対馬由来の天然個体(1個体)を用いて、近縁種より得られたマイクロサテライトマーカー5種類の型判定、およびmtDNAのCOI領域の塩基配列の決定を行った。 マイクロサテライト解析の結果、1種類のマーカーでアオリイカ集団内に多型が認められた。また、mtDNAのCOI領域の塩基配列を解析した結果、沖縄島由来のアオリイカでは、3種類のハプロタイプ、H1, H2, H3が確認され、対馬由来の個体では異なるタイプ、H4がみられた。 沖縄島由来のアオリイカ飼育集団については、順位およびソーシャルネットワークにおける中心度合いを分析した。マイクロサテライトで他個体と異なるアリルが見られた1個体は、体サイズが2番目に大きかった。COI領域のハプロタイプH2を有する個体は、体サイズが大きく、順位と中心度合いが高い傾向が見られた。以上から、アオリイカでは、社会関係を維持する上での行動の違いに遺伝的背景が関わっている可能性が示唆された。 ホタルイカ(2個体)とスルメイカ(2個体)は、富山湾由来の天然個体を使用した。種内のmtDNA塩基配列には、種内多型は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遺伝子解析については、アオリイカの行動データのある集団内でマイクロサテライトおよびミトコンドリア塩基配列の多様性を見いだし、体サイズや社会関係と関連する傾向が見られたのは大きな進歩であった。以上より、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果にもとづき、25年度は試料数を増やして個体ごとの行動評価を行い、遺伝子型を解析する。また次世代シーケンサーを用いて、行動特性の候補遺伝子の探索を行う。 1.行動評価:個体数を増やして、飼育下のアオリイカの行動評価を行う。具体的には、ソーシャルネットワーク分析や行動実験に基づいて、より精密な指標によるスコア化を目指す。 2.遺伝子解析:アオリイカの卵塊、ホタルイカの群など、野生下のグループ内の構成個体の血縁関係を解析し、野生群内の遺伝的構造を明らかにする。遺伝子型や血縁関係の、行動特性や社会関係への影響について考察する。 3.新規候補遺伝子の探索:また次世代シーケンサーを用いて、行動特性の候補遺伝子の探索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費として、京都大学と琉球大学の研究打合せ、学会発表、試料採取のための費用を予定している。 物品費として、次世代シーケンサー消耗品などの遺伝子解析試薬、イカの飼育のための費用を予定している。
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