2012 Fiscal Year Research-status Report
サケ未利用資源の卵巣外皮からの成長促進ペプチドの探索
Project/Area Number |
23658167
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
森山 俊介 北里大学, 水産学部, 教授 (50222352)
|
Keywords | 卵巣外皮 / サケ / ペプチド / 成長促進 / インスリン様成長因子 |
Research Abstract |
サケの卵はイクラや筋子として商品価値は極めて高いが、イクラを採取した後に排出される卵巣外皮の機能性については殆ど研究されていないため廃棄処分されている。申請者はこれまでの研究により、サケ卵巣外皮の粗抽出物に魚の成長を促進する因子の存在を示唆する結果を見出し、次いで、アセトン処理した卵巣外皮の1N塩酸アセトン抽出残渣の80%アセトン抽出物にニジマス肝臓のインスリン様成長因子の発現を増加させるペプチド群が存在することを明らかにした。しかし、フラクションの収量が極めて微量であるため、ペプチドあるいはタンパク質を同定するまでには至っていない。そこで平成24年度は、インスリン様成長因子の発現を活性化させるペプチドの構造決定を明らかにすることを目的として、高収量の80%アセトン抽出物を調製する方法を確立した。得られた抽出物をゲル濾過に付して分画し、得られたフラクションを高性能液体クロマトフラフィーに付して精製した。その結果、これまでの研究と同様に、分子量10、14および18 kDaのペプチドおよびタンパク質が得られた。現在、これらのペプチドおよびタンパク質のアミノ酸配列を解析している。また、おもに80%アセトン抽出物をベースとして、サケ・マス用の配合飼料を試作し、この飼料のサケ科魚類の成長促進に及ぼす効果に関する試験を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イクラを採取した後に排出されるサケ卵巣外皮の80%アセトン抽出物をゲル濾過および高性能液体クロマトグラフィーで分画・精製し、ニジマス肝臓のインスリン様成長因子の発現を増加させるペプチド・タンパク質群を単離した。一方、インスリン様成長因子の発現を促進させるペプチド・タンパク質群は、ごく微量成分であるため、実験に用いるための絶対量を精製することがむずかしかったので、本年度は、おもに効率的な80%アセトン抽出物の調製法について検討した。現在、これらの機能性成分の構造解析を行っている。また、これまでに得られた研究成果に基づいて、機能性成分を配合した飼料を作成し、魚の成長促進に及ぼす効果に関する研究に着手した。このように、本研究はおおむね研究計画通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、アセトン処理したサケ卵巣外皮から効率よく80%アセトン抽出物を調製し、各種クロマトグラフィーに付すことにより、魚の成長促進において重要な機能を担う肝臓のインスリン様成長因子の発現を増加させると予想されるペプチドおよびタンパク質群を調製することを可能とした。今後、単離したペプチドおよびタンパク質の全一次構造を部分アミノ酸配列の情報を収集し、得られた成果に基づいて、cDNAのクローニングにより決定する。さらに、ペプチドおよびタンパク質の肝臓のインスリン様成長因子および脳下垂体の成長ホルモンの発現に及ぼす効果を明らかにする。また、ペプチドおよびタンパク質を魚に反復投与して、成長促進効果を検証する。以上の通り、卵巣外皮由来のペプチドおよびタンパク質群の魚の成長の調節機構に及ぼす効果に関する基礎的知見を集積する。さらに得られた成果に基づいて、卵巣外皮由来を有効利用することによる増養殖対象魚の効率的な増養殖技術の開発を図る。 1)これまでの研究成果に基づいて、卵巣外皮由来の成長促進ペプチド群を単離して、部分構造解析を行う。次いで、アミノ酸配列の情報に基づいて、cDNAのクローニングにより全一次構造を決定する。 2)精製した成長促進ペプチド群の肝臓のインスリン様成長因子および脳下垂体の成長ホルモンの発現に及ぼす効果を検討する。 3)脳下垂体および肝臓系の成長促進関連ホルモンの発現増加活性を有するペプチドを魚に反復投与し、成長促進効果を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(9 results)
-
-
-
[Journal Article] Chum salmon fry grow faster in seawater, exhibit greater activity of the GH/IGF axis, higher Na+, K+-ATPase activity, and greater gill chloride cell development.2012
Author(s)
Iwata M, Kinoshita K, Moriyama S, Kurosawa T, Iguma K, Chiba H, Ojima D, Yoshinaga T, Arai T.
-
Journal Title
Aquaculture
Volume: 362-363
Pages: 101-108
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
[Book] Prolactin2013
Author(s)
Takahashi H, Kudose H, Takagi C, Moriyama S, Sakamoto T.
Total Pages
21-34
Publisher
InTech