2012 Fiscal Year Research-status Report
アコヤガイ外套膜上皮細胞移植による真珠生産法と真珠黄色度調節技術の開発
Project/Area Number |
23658169
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
淡路 雅彦 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 養殖技術部 繁殖グループ長 (20371825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60303757)
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Keywords | 真珠 / 細胞培養 / 色素 / アコヤガイ / 外套膜 |
Research Abstract |
この研究は真珠を作るアコヤガイ外套膜外面上皮細胞を培養しその培養細胞を移植して真珠を生産する技術を開発する事と、真珠の品質を決める重要な要因である黄色味について、その実体である黄色色素とその産生に関わる遺伝子の解明を目的とする。24年度は上皮細胞移植法の最適化、貝殻真珠層黄色度の異なる貝から得た上皮細胞の混合移植、上皮細胞凍結保存法の検討、上皮細胞増殖条件の解明、黄色色素の構造解析、色素産生に関わる遺伝子のスクリーニングを進め以下の結果を得た。1.貝殻真珠層黄色系統と白色系統から得た上皮細胞を比率を変えて混合し60万細胞/核で移植すると、移植した真珠核の75から88%で真珠層が形成された。その中でシミの面積が3割以下の珠について真珠層の黄色度を測定したところ、混合比に応じ真珠の黄色度が変化した。2.凍結保存法の検討では、外套膜から分離した上皮細胞をDMSO生理塩類液(濃度2M)を用い、-2℃/分で冷却し凍結した。解凍後移植して真珠形成を確認する実験を現在進めている。3.上皮細胞増殖条件の解明ではアコヤガイ血清、哺乳類インスリンを培養液に添加して効果を検討したが、細胞増殖促進効果は認められなかった。一方、実験の過程で、上皮細胞により濾胞状構造が形成されることが見いだされた。4.アコヤガイ真珠層から黄色色素を抽出し、2種類の主成分(E1およびE2)を分離した。各成分の顕微赤外分光(FT-IR)分析、エネルギー分散型X線S(XMA)分析の結果から、主成分E1は金属(鉄)酸化物・水酸化物を主組成とする無機色素、主成分E2はポリアミド等を主組成とする有機色素と推察された。また、黄色色素産生関連遺伝子を調べるために、黄色真珠層系統と白色真珠層系統のアコヤガイ外套膜間でcDNAサブトラクションを行った。その結果、両系統外套膜間で発現差のある約600種の遺伝子cDNAが抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上皮細胞移植法の検討は順調に進捗しているが、上皮細胞増殖条件の解明と黄色色素の産生に関わる遺伝子の解明はやや遅れている。そのため(3)やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大きな変更はなく、25年度は1.上皮細胞移植法についてはこれまで結果を基にして、成果の取りまとめに必要なデータの収集を進める。また外面上皮細胞の凍結保存については、凍結保存した細胞による真珠形成を確認する。2.外面上皮細胞の培養については、実験の過程で見いだされた濾胞状構造の形成条件の検討と微細構造の観察を行い、細胞増殖の有無を検討する。3.黄色色素の構造解析については,色素主成分の各種溶媒に対する溶解性が大きな障害となっていたが,酸加水分解により溶解性が改善されることが分かっている.今後は主成分の酸加水分解物を対象とし,核磁気共鳴(NMR)分析等により構造解析を進めていく.また,黄色色素産生関連遺伝子を同定するために,cDNAサブトラクションによるスクリーニングで抽出されたcDNA群の塩基配列解析等を進めてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度交付助成金により、研究代表者は上皮細胞移植に関連する実験と外面上皮細胞の培養条件の検討を進め、研究分担者は黄色色素の実体解明と色素産生関連遺伝子のスクリーニングを進める。助成金は試薬・消耗品の購入、旅費等に用いる。
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Research Products
(3 results)