2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23658170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮下 和夫 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (10182015)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 食品 / 脂質 / DHA / 酸化 / 抗酸化 |
Research Abstract |
褐藻には脂質が3~8%含まれている。褐藻脂質中には、α-リノレン酸(18:3n-3)、ステアリドン(18:4n-3)、EPA(20:5n-3)、アラキドン酸(20:4n-6)といった機能性に優れた高度不飽和脂肪酸(HUFA)が多く(40~60%)含まれている。これらのHUFAは分子構造的に酸素との反応性が高く、保存中などに容易に酸化されやすいと考えられている。しかし、褐藻類を乾燥状態あるいは塩蔵状態で長く保存しても、臭いの劣化など、脂質過酸化によって引き起こされる変化はあまり観察されない。本研究ではこの謎を解明するために、乾燥褐藻(ワカメとアカモク)の保存中での脂質酸化について検討した。その結果、含まれるHUFAはほとんど酸化されないことを明らかにした。また、脂質クラス別に詳細な検討を行ったところ、中性脂質やリン脂質中のHUFAは若干酸化されるものの、褐藻脂質の主要成分である糖脂質中のHUFAは極めて安定なことを見出した。海藻の葉緑体チラコイド膜では糖脂質が主要な脂質形態であり、酸化ストレスを受けやすいチラコイド膜を構成する糖脂質中のHUFAの高い酸化安定性は、光合成の特徴を考察する上でも極めて興味深い。そこで、糖脂質中のHUFAの酸化安定性について、改めて、他の脂質クラス(トリアシルグリセロール(TAG)とホスファチジルコリン(PC))と比較した。その結果、魚油TAGや魚卵PCではEPAやドコサヘキサエン酸(20:6n-3,DHA)などのHUFAが多く含まれていたため、比較的不飽和度の低いリノール酸(18:2n-6)を主たる不飽和脂肪酸とする大豆TAGと比べ、極めて酸化されやすかった。一方、マコンブから調製した糖脂質では、α-リノレン酸、ステアリドン酸、EPAといったHUFAを多く含んでいたが、大豆TAGとほぼ同等の高い酸化安定性を示した。以上より、ステアリドン酸やEPAといったHUFAは糖脂質として存在することにより、その酸化安定性がTAGやPCに結合している場合よりも高いことが初めて明らかにされた。
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[Journal Article] Oxidative Stability of Glyceroglycolipids Containing Polyunsaturated Fatty Acids2012
Author(s)
Yamaguchi, T., Sugimura, R., Shimajiri, J., Suda, M., Abe, M., Hosokawa, M., Miyashita, K.
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Journal Title
J.Oleo Sci.
Volume: 61(掲載決定)
Peer Reviewed
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