2011 Fiscal Year Research-status Report
海産被子植物アマモの繁殖戦略を決定する生態特性と分子機構の解明
Project/Area Number |
23658177
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
柿沼 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60303757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 晃央 三重大学, 生物資源学研究科, リサーチフェロー (20500804)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 海産被子植物 / アマモ / 海草 / 種子 / 発芽 / 多年生 / 花穂 / 花器官形成 |
Research Abstract |
日本沿岸域アマモ場の主要な構成種であるアマモには,2つの繁殖型(一年生および多年生)が存在し,各繁殖型で構成される群落の形成・維持機構は大きく異なる.本年度は,環境要因がアマモの繁殖戦略に与える影響と,アマモ繁殖戦略の分子機構を明らかにすることを目的として以下の研究を行った.1.室内培養による多年生アマモ種子の発芽試験 我々は既に,一年生アマモ種子を春化(低温)処理した場合,その後の有性・無性生殖の割合,生殖株の長さや花穂数等が個体レベルで変化し,最終的に一年生アマモ群落に適した繁殖様式となることを明らかにしている.そこで,環境要因が多年生アマモの繁殖様式に与える影響を調べるために,多年生アマモ群落より採集した種子を未処理区と春化処理区に分け,室内培養下で発芽試験を行った.未処理区および春化処理区の種子発芽率はそれぞれ15℃(約53%)および7℃(約42%)で最も高く,いずれの発芽温度においても春化処理区の方が有意に高い種子発芽率を示した.2.アマモの新規花器官形成遺伝子群(MADSボックス遺伝子群)の単離・同定 陸上被子植物の花器官形成は,複数のMADSボックス遺伝子群によって制御されており,アマモの花器官(花穂)形成の分子機構においても,MADSボックス遺伝子群が重要な役割を果たしていることが考えられる.そこで本研究では,アマモ場より採集した一年生および多年生アマモの生殖株と花穂からcDNAを合成し,我々が既に単離・同定しているコアマモやアマモのMADSボックス遺伝子のcDNA塩基配列情報を基に作製したプライマーを用いてRACE PCRを行い,アマモMADSボックス遺伝子cDNAの単離・同定を試みた.その結果,SQUA,AG,SEPサブファミリー等と高い相同性を示す複数のアマモMADSボックス遺伝子cDNAが単離・同定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画には,(1)室内培養による多年生アマモ種子の発芽試験,(2)アマモの新規花器官形成遺伝子群(MADSボックス遺伝子群)の単離・同定,をあげていた.(1)については計画通りに研究が行われ,環境要因(春化処理の有無と発芽温度)が多年生アマモの繁殖様式に与える影響を明らかにすることができた.(2)についてもほぼ計画通りに研究が行われ,一部cDNA断片の塩基配列解析が未着手ではあるが,複数のアマモMADSボックス遺伝子cDNAを単離・同定することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に行ったRACE PCRにより得られた一部cDNA断片について,塩基配列解析を行うことができなかったために次年度使用額が生じた.そこで,次年度は先ず増幅cDNA断片の塩基配列解析等を進め,アマモMADSボックス遺伝子cDNAの単離・同定を行う.次いで,当初の計画通りに,(1)屋外水槽培養による多年生アマモ発芽体の生長試験と(2)一年生および多年生アマモにおけるMADSボックス遺伝子群の発現解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者が主に担当する(1)屋外水槽培養による多年生アマモ発芽体の生長試験と(2)一年生および多年生アマモにおけるMADSボックス遺伝子群の発現解析に用いる試料の調製(アマモ種子の発芽体の培養調製)に必要な消耗品の購入に,次年度直接経費の約17%を使用する.研究代表者が主に担当する(2)一年生および多年生アマモにおけるMADSボックス遺伝子群の発現解析と,今年度未着手の一部cDNA断片の塩基配列解析等に必要な消耗品の購入に,次年度直接経費の約83%と次年度使用額を合わせて使用する.
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