2011 Fiscal Year Research-status Report
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23658187
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
颯田 尚哉 岩手大学, 農学部, 教授 (20196207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立石 貴浩 岩手大学, 農学部, 准教授 (00359499)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 灌漑水 / 臭素酸 / 成長阻害 / DNA / 酸化損傷 / デオキシグアノシン / 8-ヒドロキシ-デオキシグアノシン / 同時分析 |
Research Abstract |
本研究では、植物に臭素酸を曝露させ、そのDNA中のdGが酸化されて生成する8-OH-dGを酸化損傷の指標として分析し、灌漑水の栽培リスクの検出手法の確立を目指す。平成23年度は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)によるdG、8-OH-dGの同時測定システムの構築を試みた。dGの測定には、紫外吸光検出器が必要であり現有しているが、8-OH-dGを検出するECD(電気化学検出器)は現有していないため、本予算で導入し設備備品費により調達した。 標準品により分析条件を検討した結果、分離カラム(CAPCELL PAC C18 φ 4.6、25cm)、移動相(10mM燐酸2水素1ナトリウム、8%メタノール)、UV検出器(290nm)、ECD検出器(作用電極はグラファイト、印加電圧は500mV)において、サンプル注入量20μLの場合、dGは50mg/L、8-OH-dGは1μg/Lの濃度を問題なく検出することかできた。変動係数はそれぞれ、3.6%と6.1%であり、実用上問題のない再現性を示した。dGは500mg/L、8-OH-dGは10μg/Lまで直線性を確認し、決定係数は1.00であった。実試料には目的とするdGと8-OH-dG以外の物質も含有し、多数のピークを検出する。イネ地下部のDNA加水分解試料について、120分の測定を行ったところ、ECD検出器で55分に不明ピークが検出された。本研究の分析条件では実試料の測定間隔は60分とした。 イネの栽培実験で、臭素酸による成長阻害を目視による観察で確認した。寒天培地で栽培し臭素酸に曝露した地下部についてdG、8-OH-dGの同時測定を行い、8-OH-dG/dGの比を指標として評価したところ、臭素酸濃度と8-OH-dG の関連は明確でなく、今後もさらなる検討を要することがわかった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初目的であるHPLCによるdG、8-OH-dGの同時測定システムを構築し、標準品により分析条件を決定することができた。コマツナを用いての栽培実験も行ったが、実試料の分析はコマツナ地上部と当初計画にないイネ地下部両方で行い、夾雑物により実試料は標準品よりも分析に時間を要することが分かった。イネ試料は寒天培地栽培で行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に構築したHPLCによるdG、8-OH-dGの同時測定システムは、4.6mm径のカラムを用いており、HPLCの分野ではマクロ系の分析になる。マクロ系ではポンプ圧力が上昇するため、サンブル注入量の増量による高感度化や分析時間の短縮が難しい。2.1mm径のカラムを用いたセミミクロ系に変更すると、サンブル注入量の増量による高感度化と分析時間の短縮が可能になるため今後検討する必要がある。 dG、8-OH-dGの同時測定の前処理は、植物を収穫後洗浄した試料を、直ちに液体窒素で凍結し、メノウ鉢で粉砕すること、植物細胞の細胞壁を物理的に粉砕するとともに、粉砕後は直ちに-30℃で保存すること、粉砕後のサンプルは、遺伝子の抽出と加水分解を行うことがある。前処理は多段の工程を経るため、栽培条件によらないDNAの酸化損傷を引き起こし、誤差の原因となる可能性がある。前処理工程の迅速化や保存温度の低下などサンプルの変質を抑える工夫が必要である。 農作物の栽培方法は多種類あるため、適切な栽培方法や臭素酸曝露方法も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度にHPLCによるdG、8-OH-dGの同時測定システムが基本的に構築されたため、これを用いて実際に栽培条件を変えて農作物中のdG、8-OH-dGの同時測定を試みる。農作物としては、イネまたはコマツナを採用し、地下部について遺伝子中の8-OH-dGのdGに対する比を評価する。農作物の栽培と遺伝子の抽出と加水分解は立石が担当する。実験用の機材、材料の購入、分析用器具、試薬の購入に研究費を使用する。 dG、8-OH-dGのHPLCによるの同時測定システムの改良を試み、予算を充当する(颯田担当)。セミミクロカラムを導入し、高感度化と分析時間の短縮を検討する(颯田担当)。
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Research Products
(2 results)