2011 Fiscal Year Research-status Report
農村河川での医薬品・生活関連化学物質の存在実態と集落排水による濃度低減効果の解明
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23658193
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
治多 伸介 愛媛大学, 農学部, 准教授 (60218659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中矢 雄二 愛媛大学, 農学部, 客員教授 (00036427)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医薬品汚染 / 農村河川 / 集落排水 |
Research Abstract |
H23年度は「愛媛県I市R地区の農村河川」について「下水道未普及状況下での,医薬品・化粧品等の生活関連化学物質(PPCP)の存在実態」を解明し「河川の生態環境リスク評価」を実施することを目的とした.調査対象地区のR地区には約500人(約150家屋)が居住し,R地区の家屋は,大部分が汲み取り処理か戸別単独浄化槽処理であり,生活雑排水の殆どが未処理放流されている. 調査の結果,R地区の河川(本流1本,支流4本)の全てでPPCPが検出され,下水道未普及地区の農村河川で,PPCP汚染が進行している実態が明らかとなった.また,検出されたPPCPは,解熱消炎鎮痛剤(Ketoprofen,Diclofenac Sodium,Indomethacin,Propyphenazon),高脂血症用剤(Bezafibrate ,Clofibric acid),防虫剤(N.N-Diethyl-m-tolamide),強心剤(Caffeine),鎮痒剤(Crotamiton),抗潰瘍剤(Sulpiride),水虫薬(Griseofulvin),紫外線吸収剤(Benzophenon)と多様で,農村河川でも,都市河川と同様に様々なPPCPによって汚染が進行していることが分かった.PPCP検出濃度はng/Lオーダーで,既報の都市河川での検出濃度よりは低めであったものの,PNEC(生物無影響濃度)と実測値の比を用いて「生態環境リスク評価」を実施したところ,「今後,情報収集に努める必要がある」と判断される「0.1以上」に近い成分が存在した.「0.1以上」に近かった成分は,解熱消炎鎮痛剤(Ketoprofen)であり,今後の農村河川では,Ketoprofenに特に着目して研究と対策を進めていく重要性が示唆された.以上より,下水道未普及地区の農村河川におけるPPCP対策の重要性が強く示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった「河川水質調査」と,その結果を踏まえた「リスク評価作業」は,ほぼ予定通り終了した.ただし「底泥調査」については,サンプリングは実施したものの,分析作業に手間取り,分析結果を予定通り得ることが出来なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度で十分に得られなかった,下水道未普及河川での「底泥中のPPCP含有状況」に関する分析結果を早急に得る.そして,当初予定通り,H24年度は「農業集落排水導入による河川でのPPCP環境改善の効果」を検討する.H24年度には,R地区の家屋は,農業集落排水施設への接続が本格的に開始される.市役所の計画では,H24年度末までに家屋40%の接続が予定されている.従って,集落排水施設導入によって,PPCP汚染状況の改善がなされるとすれば,調査河川のPPCP存在濃度は,徐々に低下すると予想されるため,H24年度には,H23年度のR地区の河川水および底泥調査を継続する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に使用する備品( LC/MS/MSなど)は全て揃っているため,分析作業については,分析試薬の購入と人件費が主となる.また,研究2年目であるため,成果発表を活発に行うための旅費を計上している.
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