2012 Fiscal Year Research-status Report
植物工場における根茎利用生薬植物の養液栽培技術の開発
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23658204
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
小峰 正史 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (20315592)
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Keywords | 植物工場 / 薬用植物 / 養液栽培 / 最適条件 |
Research Abstract |
平成24年度は,オウレンについては三種類の養液供給方法で比較試験を行い,トウキについては栽培に適した養液条件,光強度,温度を明らかにした。 オウレンの養液供給法の比較試験では,根への酸素供給量を増やすことを目的に,ドリップ方式,間欠給液方式,スプレー方式の三種類の方式で養液を供給し,栽培試験で比較した。実験にはオウレン培養苗を用い,2週間栽培した。実験の結果,総合的に最も良好な生育を示したのは間欠給液方式で4時間ごとに1時間給液した場合であった。地上部の生長には差はなく,苗の生存率はドリップ方式が高く,根の伸長は間欠給液方式が良かった。また,スプレー方式,間欠給液方式では根焼けの症状が見られた。根を空気に曝露する方式では塩類の集積による根焼けが発生するので,従来最適とされていた濃度よりも薄い養液を用いる必要があることが明らかとなった。また,養液の供給回数,時間についても検討が必要であることがわかり,次年度の研究遂行にあたっての課題が明確になった。 トウキについては最適環境条件,最適養液条件を明らかにすることを目的と測定試験を行った。養液条件については,大塚B処方液を基準として,養液濃度・pHを変えて2ヶ月間栽培し,生長量を比較した。その結果,大塚B処方液では標準濃度,pH 6の条件で最も生育が良く,また,生育初期段階では養液濃度を低めのが適当であることが明らかとなった。純光合成速度は,光補償点が約40 μmol/m2/s PPFD,光飽和点が約1000 μmol/m2/s PPFDであり,光飽和点において気温25~30℃の範囲で光合成速度が極大になった。また,連続明期条件下でも純光合成速度は変化せず,一定であることが明らかとなった。これにより,トウキを植物工場で栽培する際に適した光条件,温度条件,養液条件を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オウレンの養液供給法の比較については,短期間の比較試験の反復を行って結果を得たが,長期間の栽培試験,反復は行えなかった。計画より約2ヶ月遅れに相当する。各給液方法の有効性,課題などについては明確になったため,一応の成果は得られたので,平成25年度では課題解決のための研究計画を策定する。 トウキについては,最適養液条件,環境条件を確定することができ,オウレンと同様の養液給液装置の作成も完了している。給液方法による生育比較については平成24年度に着手する予定であったが,行えなかったため,約2ヶ月遅れている。 また,培土(支持材)の検討については,適切な材料が見つからなかったため,引き続き新規材料の選抜を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
オウレン,トウキとも,基本的な栽培条件の確定は終わり,栽培装置も完成しているので,平成25年度は栽培試験を反復し,根茎が伸長・肥大する給液条件を明確にする。 具体的には,ドリップ方式,間欠給液方式,スプレー方式のそれぞれにつき,一日あたりの給液回数と,一回あたりの給液量を変えて栽培試験を行い,まずは主根の長さ(伸長)を基準に最も主根が伸長する給液方式と給液パターンを明確化する。また,平成24年度のオウレンにおける試験で,根を空気中に曝露する間欠給液方式とスプレー方式では根への塩類の集積による根焼けが発生した。過去の研究からオウレンでは大塚B処方液の場合1/4濃度,平成24年度の成果でトウキは標準濃度が適していることが分かっているが,これらは水耕栽培法で試験した結果であり,両方式を用いる場合には水分の蒸発による塩類集積を考慮して養液濃度を薄くするか,根の呼吸を阻害しない程度に給液頻度を増やす必要があると考えられる。養液の供給頻度に関しては既述の通り試験を行うが,養液濃度についても従来よりも濃度を低くして栽培試験を行い,根に塩障害を与えない条件を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究機関最終年度であり,消耗品の購入と旅費などにあてる研究費が当初より設定されている。 平成25年度は,生育状況の判定に用いる主要な測定機器である光合成速度測定装置に不具合が発生したため,この修理のための費用のほかは,消耗部材の購入と,9月に開催される生物環境工学会での成果発表のための旅費が必要である。また,これまでの成果を論文にまとめて本年度中に投稿するため,英文校閲などに研究費を使用する予定である。
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