2011 Fiscal Year Research-status Report
アクアフォトミクスを用いた生体内水分子構造の解析による細胞の生存能力診断
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23658211
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
ルミアナ ツエンコヴア 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30294200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近江戸 伸子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30343263)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アクアフォトミクス / 細胞・組織 / 分析化学 / WAMACS / WAPS |
Research Abstract |
本研究の目的は、近赤外分光法によりDNAやタンパク質などの動態を、生体分子と水分子との相互作用を反映する近赤外スペクトルの吸収バンド(アクアフォトム)から抽出するという新しい分野であるアクアフォトミクスの観点から明らかにすることである。4種類の異なるDNA(48502bpの2本鎖直鎖、2686bp、2675bp、および2238bpの環状2本鎖)を超純水に濃度が5ng/μLとなるよう加え、2倍希釈による5から0.005ng/μLの10段階の濃度においてスペクトルを室温で測定した。OH伸縮振動の第1倍音領域を解析するため、近赤外スペクトルデータの1300-1600nm領域を用いた。解析結果の有効性を検討するため、データセットをDNA濃度の最高・最低値を含むモデル構築セットと中間濃度の予測セットに分割した。常用対数化したDNA濃度をPLS回帰によって定量化すると、全ての回帰モデルで相関係数R=0.99が得られ、R=0.85から0.93の予測結果が得られた。各DNAの回帰モデルは異なったピークを示し、DNA構造の特徴を水分子マトリクス構造(WAMACS)として近赤外スペクトルデータに反映していることが示唆された。次に、主成分分析を用いたSIMCA法により4種類のDNAを識別した。SIMCA法により、各DNAの違いの度合いを近赤外スペクトルのみからクラス間距離として求めることが出来る。SIMCAモデルを構築すると、各DNAの塩基対の違いにしたがったクラス間距離が得られた。スペクトルのみから有効なクラス間距離が求まったため、水の近赤外吸収パターン(WAPS)が寄与していると考えられる。しかし、全てのモデル構築セットに対しては100%の識別結果を示したが、予測セットでは17%から75%の識別精度であった。次の課題として、それぞれのDNAに対して有効な主成分モデルを構築する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今日のオミクス分野の研究では、DNAやタンパク質などの要素を単離した上で測定を行うため、多大な労力と時間を必要とするほか、非破壊的かつ経時的に生体内物質の動態を計測することができない。本研究では、非破壊的に測定したDNA溶液の近赤外スペクトルを用い、塩基対数の定量化を高精度で可能とした。その結果、DNA構造の特徴を水分子マトリクス構造(WAMACS)として近赤外スペクトルに反映させた。また、定性分析によりスペクトルデータのみから4種類の異なったDNAの識別を行い、DNAの特徴を示す水の近赤外吸収パターン(WAPS)を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策:本研究で用いたDNAでのスペクトル測定を複数回行い、定性・定量分析の信頼性を高め、それぞれの塩基配列の特徴を反映する水の近赤外吸収パターン(WAPS)を同定する。また、制限酵素により切断した2本鎖直鎖DNAを加え、異なった塩基配列によるDNAの情報を近赤外スペクトルから抽出することを目指す。オリジナルの2本鎖直鎖DNAと切断により塩基配列の一部が変化したDNAとをWAPSにより比較し、DNAの塩基配列構造と水との相互作用についてのアクアフォトムデータベースを構築する。これにより、DNA溶液サンプルの近赤外スペクトルからDNAの長さと構造を識別する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追加実験を行って定量・定性モデルの精度と信頼性を向上して学術的に報告するため、消耗品および学会参加費として使用する予定である。
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