2011 Fiscal Year Research-status Report
反芻家畜の繊維消化を促進する繊維サプリメントの開発
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23658213
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 泰男 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50153648)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ルーメン / 繊維消化 / サプリメント / 細菌 / ブースター |
Research Abstract |
稲ワラに代表される難分解性繊維の消化に関わるルーメン細菌を賦活化できる天然の易分解性繊維を見つけ出し、それを稲ワラに少量補給することで繊維消化の起爆剤(ブースター)とできるとの仮説検証を研究目的とした。 候補補給繊維源8品目をヒツジルーメン内でin situ培養し、各々の繊維源の消失率とともに付着増殖する菌群を同定した。同時に稲ワラについても同様に培養、分析に供した。培養時間は24時間までは4-6時間おき、それ以後は24時間おきとした。 付着菌群の同定は16S rRNA遺伝子解析により行った。また各々の菌群定量はreal-time PCR法で実施した。この際、焦点となるのは、各々の試料上で検出される菌叢の多様性と主要構成員の増殖速度であり、初期検出頻度およびその後の増殖速度が高く、菌体量が試料のルーメン内消失最大時までに平衡に達している場合、分解を主導する菌群であると判断できる。このような基準から、稲ワラの消化を主導しているのはFibrobacter succinogenesであり、供した補給繊維源のうち、この菌種を活性化したのはフジ豆外皮およびヒヨコ豆外皮であると特定できた。一方、従来補給繊維として重宝されてきたビートパルプはまったく本菌の増殖にはかかわらないことが明らかとなった。 以上のように、初年度は候補繊維源全てについて分解を主導する菌群を特定し、稲ワラのそれと照合ができるリストがほぼ完成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験に供する候補繊維源について、計画では約20品目としていたが、代表的なものや未利用のものをふくめ8品目にとどまった。ただし、その後の解析はきわめて順調に進行しており、稲ワラ消化のブースターとして活用できそうなものをほぼ特定できたといえる。とくに稲ワラの分解を主導するFibrobacter succinogenesについては、系統的に異なる多くの菌株がフジ豆外皮およびヒヨコ豆外皮で賦活化され、これら豆外皮の効能が高く評価できている。さらにこれら豆外皮は日本も含め多くの先進国では未活用のものであり、東南アジアや南アジア、さらには西アジアの産出国からの新たな天然飼料源の発掘につながる可能性が高まった。 以上のような理由より、本挑戦的萌芽研究はおおよそ順調に進展できており、新たな可能性を提示できつつあると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒツジへの給与試験にて、初年度照合できた補給繊維源と主粗飼料の組み合わせによる繊維消化率向上について実証するのが2年目のタスクである。照合一致した組み合せは、具体的には稲ワラとフジ豆外皮、さらに稲ワラとヒヨコ豆外皮である。補給繊維源は国内生産されていないので適宜国外より調達するか、国内で類似のものを探すこととする。 まず、候補繊維源の最適補給レベルを明らかにするため、簡易な培養試験にて異なる補給レベルで消化率の向上程度を評価する。最も消化率の向上する補給レベルを給与試験での補給レベルとして採用する。同時に培養ルーメン内容を採取し、初年度に特定した分解主導菌群が賦活化されているかを検証する。発酵産物も分析する。すなわち、特定の細菌や代謝産物の絶対定量が可能という培養試験の長所を活かし、ブースター理論実証のためのサポートデータとする。なお、イノキュラムは、あらかじめ該当する主粗飼料主体で飼養してあるヒツジのルーメン液とする。 次に、ヒツジ4頭(ルーメンカニューレ装着)を該当の飼料(最少量の濃厚飼料に加え、主粗飼料に補給繊維源を適正レベルで添加もしくは無添加のもの)で飼養し、全糞採取の消化試験を実施する。これにより上の研究概要に記した理論が消化率向上に反映されているかを確認する。 最後に、2年間の成果をとりまとめ、情報発信(学会および論文発表)を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用経費の発生は、当初予定にあったルーメン菌種の定量系の確立が遅れたことで定量に使用する試薬購入を控えていたことに由来する。なぜなら長期保存にむかない試薬であるからである。本未使用額は24年度で当該の定量系が確立され次第、予定試薬を購入し、定量を進めることで消費する予定である。
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Research Products
(1 results)