2011 Fiscal Year Research-status Report
ニワトリにおける非酵素的糖化化合物の代謝機構の解明
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23658215
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
喜多 一美 岩手大学, 農学部, 教授 (20221913)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | グリケーション / グルコース / アマドリ化合物 / 蛋白質合成 / 筋肉 / 腎臓 / 脾臓 |
Research Abstract |
今までに、トリプトファンとグルコースのピクテースペングラ-反応から生成されたPHP-THβCが、ニワトリ胚筋芽細胞の蛋白質合成を低下させることを見出した。しかし、生体内におけるPHP-THβCの生理的濃度との関連は不明であった。そこで、トリプトファン過剰飼料を給与したニワトリにおける血中糖化トリプトファン化合物濃度(PHP-THβCおよびトリプトファンーグルコースーアマドリ化合物)を測定した。10日齢の単冠白色レグホン雄に、通常飼料およびトリプトファン過剰(2%および3%)飼料を14日間給与し、心臓採血により血液を採取した。糖化トリプトファン化合物濃度はLCMSを用いて測定した。トリプトファン過剰飼料給与に伴う血中トリプトファン濃度の変化と糖化トリプトファン化合物濃度の変化の間には有意な正の相関が認められた。また、PHP-THβCの生理的血中濃度は約5μMおよびトリプトファンーグルコースーアマドリ化合物の生理的血中濃度は約3μMであることが明らかとなった。申請者によって見出されたPHP-THβCによる筋芽細胞蛋白質合成の低下は、培養液中のPHP-THβC濃度が0.025~2.5μMの範囲で引き起こされていることから、生理的な濃度のPHP-THβCでも筋肉蛋白質の合成を抑制することが明らかとなった。 申請者によって、非酵素的糖化化合物はニワトリの肝臓、脾臓及び腎臓に特異的に蓄積することが明らかとなっている。そこで、非酵素的糖化化合物の蓄積が一部の組織、特に脾臓、肝臓及び腎臓に集中する機構を解明するために、14C―グルコース用いて、放射性の糖化トリプトファン化合物およびバリンーグルコースーアマドリ化合物を調製した。今後、これらの放射性化合物が肝臓、脾臓及び腎臓の細胞に特異的に取り込まれるか否かを調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、非酵素的糖化化合物が筋肉蛋白質合成を抑制する機構を解明する研究、および非酵素的糖化化合物の蓄積が一部の組織、特に脾臓、肝臓及び腎臓に集中する機構を解明する研究は順調に進んでいると考えている。これらの結果の一部は、以下のとおり既に学会誌に掲載予定であるともに学会において発表されている。Ryosuke Nishimagi and Kazumi Kita, Influence of beta-carboline produced from glucose and tryptophan on protein synthesis of chicken embryo myoblasts. Journal of Poultry Science (2012) In press.西間木良輔・喜多一美、日本家禽学会第2010年度秋季大会(2010年)、グルコース‐トリプトファン化合物がニワトリ胚から採取した細胞の蛋白質合成に及ぼす影響、信州大学西間木良輔・喜多一美、日本家禽学会第2012年度秋季大会(2012年)、トリプトファン過剰飼料を給与したニワトリにおける血中トリプトファン濃度と糖化トリプトファン化合物濃度の関係、名古屋大学
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Strategy for Future Research Activity |
非酵素的糖化化合物の蓄積が一部の組織、特に脾臓、肝臓及び腎臓に集中する機構を解明するために、14C―グルコース用いて、放射性の糖化トリプトファン化合物およびバリンーグルコースーアマドリ化合物を調製した。今後、これらの放射性化合物が肝臓、脾臓および腎臓の細胞に特異的に取り込まれるか否かを調査する。具体的には、ニワトリ胚から筋肉、肝臓、脾臓および腎臓の細胞を調製し、培養液に放射性の糖化トリプトファン化合物またはバリンーグルコースーアマドリ化合物を添加する。一定期間細胞を培養後、培養液を除去し、細胞内の放射能を測定する。 ここで糖化トリプトファン化合物またはバリンーグルコースーアマドリ化合物の細胞内取り込みが確認されたならば、ニワトリの肝臓、脾臓および腎臓からホモジネートを調製し、非酵素的糖化化合物を加えインキュベーションする。一定時間後、除蛋白質および脱脂を行い、LCMSを用いて非酵素的糖化化合物を定量する。もし非酵素的糖化化合物が減少していれば、非酵素的糖化化合物が代謝分解されている可能性がある。次に、ショ糖密度勾配遠心分画法により組織ホモジナイズ成分を分画し、同様の実験を行い、非酵素的糖化化合物を分解した成分の同定を目指す。 申請者は、タウリンおよびオルニチンがアマドリ化合物とPHP-THβCの生成を抑制することを見出している。そこで、ニワトリ胚筋芽細胞培養系を用い、培養液にタウリンまたはオルニチンを非酵素的糖化化合物と共に添加し、タウリンまたはオルニチンに蛋白質合成の低下を防ぐ作用があるか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、備品としてゲル撮影装置に取り付けるデーター処理装置を購入する予定である。この装置は、紫外線照射により蛍光を発する性質を利用した糖化トリプトファン化合物の確認に使用する予定である。残りの経費は、放射性グルコースなどの消耗品、情報収集するための学会参加旅費、実験補助の謝金などに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)