2011 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞を用いた絶滅危惧種・希少種の保全に関する研究
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23658224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 裕 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10303869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 幸之助 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 講師 (60445830)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 野生動物保護・増殖 / 多能性幹細胞 |
Research Abstract |
希少な哺乳動物を保全するため、それらの体細胞から人工的に多能性幹細胞を誘導するとともに、この細胞由来の個体生産を可能にする技術の開発を目指す。このために、人工多能性幹細胞(iPS細胞)樹立技術を応用し、希少動物の体細胞からiPS細胞を樹立し、キメラ形成、生殖細胞への分化誘導、顕微授精(ICSI)などの技術を応用し、個体生産の可能性を検討し、将来的には、この技術の希少種・絶滅危惧種・有用資源動物の保全への足掛かりを得る。本課題では、まず、わが国で準絶滅危惧種に指定されているホンドハタネズミを用いて、その体細胞からiPS細胞株を樹立し、その細胞生物学的性質をマウス由来のiPS細胞と比較しながら、異種であるマウス胚への細胞移植によるホンドハタネズミを再生する。さらに、ここで樹立されるiPS細胞や精巣由来の生殖幹細胞を用いて、これらを生殖細胞へ分化誘導後、免疫不全マウス精巣内での精子形成、ICSI技術を用いた個体生産の可能性について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3種類のハタネズミについてiPS細胞株を樹立した。細胞株の樹立効率や難しさは異なっていたが、ロシアハタネズミにおいて、多能性を維持した細胞株を樹立できたことから、順調に研究は進んでいると判断できる。 ホンドハタネズミ、ロシアハタネズミ、ユーラシアハタネズミの尾部より繊維芽細胞をえた。レトロウイルスベクターにより、iPS細胞を誘導するために多能性関連遺伝子を導入したところ、ロシアハタネズミの体細胞で最も効率に細胞株が得られた。得られた株は、マウスの胚性幹細胞のような形態のコロニーを形成した。この細胞株について、多能性マーカーについて検討したところ、アルカリフォスファターゼー陽性で、また免疫蛍光染色によってNANOG, OCT3/4, SSEA-4といったマーカーの発現も認められた。これらの細胞株が、どのような遺伝子群によって、その多能性を維持しているのかについての検討が今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度作製したロシアハタネズミの多能性分化能について、体外での胚葉体形成能、ヌードマウスでのテラトーマ形成能、細胞株由来の細胞をマウス胚に導入してキメラの形成能について、それぞれ検討する。さらに、これまでに得られた成果を取りまとめて、学会発表や論文発表として公表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の購入にあたって、予定外の値引きによって年度末に残予算(4,887円)が生じたが、本年度に消耗品によって予算執行を行う予定にしている。本年度の研究費については、以下のような支出を予定している。テラトーマ形成能を検討するために、ヌードマウスの購入、3胚葉性の細胞を分化を確認するための特異抗体、細胞株を維持するための培養液などが必要。キメラを作成するために、マウスの購入、微小ピペットを作製するためのガラス管などを購入にあてる。
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