2011 Fiscal Year Research-status Report
ブタおよびマウスの精子の育て直し処理による体外保存耐性の強化
Project/Area Number |
23658225
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原山 洋 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30281140)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 精子 / 人工授精 / 精子凍結保存 / リン酸化タンパク質 / 精巣上体 / 膜安定化因子 |
Research Abstract |
1)FITC-PNA/PI染色法により29頭分の精子試料を耐凍能の違いにより正常型(8頭分),中間型(7頭分)および異常型(低耐凍能,14頭分)に分類した。ついでこれらの精子試料の成分比較を行ったところ,耐凍能との間に有意な相関関係を見出せたのは先体チロシンリン酸化タンパク質(SPACA1)の分布状態であった。また,12頭分(正常型3頭分,中間型2頭分,異常型7頭分)については新鮮射出精子または精巣上体精子での検査も実施したところ,凍結保存前の先体チロシンリン酸化タンパク質(SPACA1)の分布状態と精子の耐凍能との間に高い相関関係が認められた。他方,抗ブタEPAA抗体を用いた蛍光免疫染色法により,ウシ精子でのEPAAの主な分布部位は後帽部であると示唆した。以上の結果および報告者の既報(Adachi et al., 2008)より,ウシ精子の耐凍能向上(先体安定化)への関与を期待できる因子を先体チロシンリン酸化タンパク質(SPACA1)およびEPAAに絞ることができた。 2)SPACA1およびEPAAのmRNAを発現する組織は,それぞれ精巣および精巣上体であることがRT-PCR法により確認された。また精子の耐凍能の異なる個体間で精巣におけるSPACA1のmRNA発現の正確性および量に大差は認められないこと,およびSPACA1の先体での分布状態にチロシンリン酸化が影響することを明らかにした。 3) 人工精巣上体管腔液の成分の検討を開始し,ブタ精子ではカルシウムイオンキレート剤および硫酸コレステロール・メチルβサイクロデキストリン混合物の有効性を認めた。なお備品として購入した精子運動解析装置はヒト精子用に開発されたものであったが,これを家畜精子に転用した場合に解析上の問題点が認められたために,客観的な手法による鞭毛運動の解析については現在再検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定よりも多くの異常型(低耐凍能)精子試料の解析を実施できたこと,および精子耐凍能向上(先体安定化)因子の候補を絞り込めたことから,項目1) については目標を達成できたと思われる。また項目2) および3) についてはそれぞれ半分程度の内容について検討をすでに進めており,進捗状況は当初の想定の範囲内である。他方,研究実績の概要に記載したように精子運動解析装置に関する問題点が生じているが,この問題点を含め,項目2) および3) の内容については当初の予定通り,次年度に継続して検討をかさねる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず平成23年度に生じた精子運動解析装置に関する問題点を解決し,ついで項目2)および3)の内容(リコンビナントタンパク質の合成系の確立,ならびに人工精巣上体管腔液の完成)を引き続き検討する。実用化試験にあたっては,産業上の波及効果がより高いブタ精子の凍結保存において,人工精巣上体管腔液による精子の育て直し処理が利用可能か否かを先に検討する。またブタ精子凍結保存での好適利用条件をある程度明らかできた段階で,同処理のマウス精子凍結保存での利用について検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算総額(直接経費)600,000円のうち,450,000円を上述の項目の検討に必要な消耗品の購入に充てる。また研究成果の口頭発表またはポスター発表を2回程度予定しており,そのために必要な経費を成果発表旅費として100,000円予算計上した。また,原著論文による成果発表を計画しており,それに要する費用(成果投稿料)として50,000円の支出を見積っている。
|