2012 Fiscal Year Annual Research Report
ブタおよびマウスの精子の育て直し処理による体外保存耐性の強化
Project/Area Number |
23658225
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原山 洋 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30281140)
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Keywords | 応用動物 / 畜産学 / 雄性繁殖能力 / 精子 / 人工授精 / 凍結保存 |
Research Abstract |
1)精子の耐凍性を向上させる先体安定化因子の探索:低耐凍性のウシ精子では凍結保存前の段階で既に先体タンパク質(SPACA1)の分布異常が認められた。またウシとブタの精子では,頭部からEPAA および68 kDaリン酸化タンパク質が消失しないと受精能獲得・先体反応(細胞膜の不安定化が必要な反応)は誘起されないことを示唆した。なお68 kDaリン酸化タンパク質は未同定である。以上から,ウシとブタの精子での耐凍性向上への関与を期待できる先体安定化因子をSPACA1とEPAAに絞った。 2)SPACA1とEPAAの特性解析:精巣で産生されるSPACA1の精子先体への配置は,精巣上体の頭と体の通過に伴うチロシンリン酸化に依存することを示した。また耐凍性の異なる精子の間でSPACA1の含量に差がないことから,耐凍性向上のための精子の処理にはリコンビナントSPACA1の付加よりも,精子に備わるSPACA1のチロシンリン酸化を人為的に誘起することが有効であると考えられた。一方,ウシEPAAリコンビナントタンパク質の作製に必要なmRNAを,その産生部位である精巣上体の体から回収したが,すべての実験において収量が極端に低いという大きな問題が認められた。 3) 薬剤処理によるSPACA1のチロシンリン酸化(育て直し)の試み:ウシ,ブタおよびマウスの精子をチロシンホスファターゼ阻害剤で処理し,SPACA1のチロシンリン酸化状態の向上を試みたが,阻害剤添加による顕著な効果は認められなかった。また精子のチロシンキナーゼがSPACA1のリン酸化状態に及ぼす影響を薬理学的に検討したが,有意な影響は見いだせなかった。以上から,精子でのSPACA1のチロシンリン酸化(育て直し)による耐凍性の向上には精巣上体で産生されるタンパク質リン酸化調節因子による特異的な作用が必要であると考えられる。
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