2011 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素の消化管機能制御機構の解明:H2Sは内因性伝達物質か?
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23658230
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
乙黒 兼一 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40344494)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 硫化水素 / TRPA1 / 知覚神経 / 5-HT / 細胞内カルシウム / RIN14B |
Research Abstract |
硫化水素の消化管機能制御機構に対する役割を明らかにするために、消化管神経叢を構成する知覚神経細胞と腸管クロマフィン細胞のモデルとなるRIN14B細胞を用い、硫化水素ドナーであるNaHSの作用の検討を行い、以下の結果を得た。1.ラットより後根神経節知覚神経細胞を分離培養した。この知覚神経細胞とRIN14B細胞にCa蛍光指示薬を負荷し、細胞内Ca濃度を測定した。また、ホールセル電位固定法によって膜電流反応を、HPLC法により5-HT放出反応を測定した。2.NaHSは細胞内Ca濃度の増加を引き起こし、この反応は細胞外Caの除去により著しく抑制された。また、このCa増加反応は、TRPV1阻害薬や電位依存性Caチャネル遮断薬では抑制されなかったが、TRPA1阻害薬によって抑制された。さらにNaHSによりCa反応は、ジスルフィド(S-S)結合を還元するDTTによって抑制された。知覚神経細胞とRIN14B細胞は、TRPA1作動薬であるマスタードオイルによっても細胞内Ca濃度増加反応を引き起こした。3.知覚神経細胞において、NaHSは内向き電流反応を引き起こした。この膜電流反応はTRPA1阻害薬によって抑制された。4.RIN14B細胞において、NaHSは5-HT放出反応を引き起こした。この放出反応は、細胞外Caの除去およびTRPA1阻害薬によって抑制された。 以上の結果より、硫化水素はTRPA1を活性化することが明らかとなった。硫化水素はチャネルタンパクのシステイン残基と共有結合することで、チャネルを開口させると考えられる。硫化水素は、消化管の神経細胞の活性化や、内分泌細胞からの伝達物質放出を介して消化管機能の調節に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」について、ほぼ全ての内容が達成されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画通りに研究を推進する予定である。分離腸管クロマフィン細胞における硫化水素の作用を検討するため、ラット腸管からのクロマフィン細胞分離培養の実験系を確立する。また、内因性硫化水素の作用を検討するため、硫化水素合成酵素の発現解析と硫化水素産生測定実験を行い、硫化水素の産生、放出を制御する因子の探索を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
知覚神経を用いた実験系において予想外のデータが一部とれたため、その確認のために培養細胞実験の一部を次年度へと変更した。それに伴い次年度使用となった研究費については、培養実験系での消耗品の補充に充てる。翌年度の予算については、計画通り消耗品の購入に充てるとともに、研究成果発表のために学会参加費と投稿論文のための英文校閲として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)