2012 Fiscal Year Research-status Report
環境適応プログラム形成の分子メカニズム―生殖系列内エピゲノム修飾変異の探索―
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23658237
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大迫 誠一郎 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00274837)
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Keywords | エピジェネティクス / 生殖細胞 / 進化 |
Research Abstract |
中立説が強調したことの一つに、「遺伝子と表現型は必ずしも一致せず、表現型は環境によって影響され、全く同じ遺伝子でも表現型は異なる」というものがある。個体発生あるいは成熟後においても環境の作用で表現型に差が生じる分子機構は定かでない。本研究では申請者が保持している「環境因子によりエピゲノム変動を起こすモデル」として、環境汚染化学物質曝露ならびに低栄養環境飼育下でCpGメチル化変動を起こすマウス実験系と、独自開発の高感度ゲノムメチル化網羅的解析法を駆使して、生殖系列を介した後世代へのエピゲノムインヘリタンスの実証を試みる。 サブテーマI)後世代インヘリタンスの検出の試み(生殖系列エピゲノム解析):再現性のある継世代影響モデルの確立を目指し、なおかつその標的と考えられる生殖細胞における遺伝子のエピゲノム変化プロファイルを明確にすることで、種の環境適応戦略の一端を明らかにする。サブテーマII)環境適応プログラム形成の方向性に関する分子機構解明:生殖細胞内で生じたエピゲノムの変化が生じる過程に関与する因子の機能解析を、分離した生殖細胞を用いて関与する因子の機能解析を試みる。 これまでの解析から標的とした薬物代謝酵素遺伝子CYP1A1のメチル化頻度は、第二世代の仔の肝臓においては非曝露の家系と同一レベルであるこというデータがでたため、解析する臓器や細胞を様々に検討する必要があると思われる。また、第一世代の肝臓内DNA低メチル化に関してはDnmt1ならびにDnmt3bの機能阻害が関与することが示唆されるデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は下記の2つのサブテーマについて研究を実施するが、これまでの状況を下記に示す。 サブテーマI)後世代インヘリタンスの検出の試み(生殖系列エピゲノム解析) 継世代影響モデルの確立のため、その標的と考えられる生殖細胞における遺伝子のエピゲノム変化プロファイルを明確にすることを目的とする。このため、胎生期ダイオキシン(TCDD)曝露により生まれた仔が成熟したのち、正常な雌に交配させて生まれた個体のエピゲノムを比較した。精巣上体精子、肝臓、腎臓の比較を行ったが、解析したCYP1A1プロモーター上流約500に位置するCpGのメチル化頻度は対照群とほぼ同じであった。細胞分取技術での生殖細胞を分取する計画は、当研究室の組換え動物室施設の問題で遺伝子改変動物導入に大幅な遅れが生じている。 サブテーマII)環境適応プログラム形成の方向性に関する分子機構解明 生殖細胞内で生じたエピゲノムの変化が生じる過程に関与する因子の機能解析を、まずヘパトーマ細胞等で行い、分離した生殖細胞を用いて関与する因子の機能解析を試みることを目的とする。まず、ヘパトーマ細胞で低メチル化が起きるか検討したが、使用したHep1c1c7(マウスの肝臓癌細胞)では対象領域のCpGはほとんどメチル化されておらず、個体で観察されるメチル化頻度が観察されなかったため、モデルとして使用するのに適当でないことが判明した。そこで、出生直後の肝臓においてTCDDを曝露した場合の低メチル化を観察したところ出生3日目から差が生じ始めることがわかった。このサンプルを用いDNAメチル化転移酵素3種について結合レベルをChIPアッセイで調べたところ、Dnmt1とならびにDnmt3bの結合がTCDDにより有意に低下することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
サブテーマI)後世代インヘリタンスの検出の試み(生殖系列エピゲノム解析):これまので網羅的CpGメチル化解析法の難点は、メチル化感受性制限酵素を使用した場合でも、非メチル化CpGサイトを持つ断片との差異により検出を行うため、1サンプルに対する解析が煩雑かつ定量性に信頼性のない点であった。そこで、独自開発したメチル化CpGサイトを持つDNA断片のみの増幅法(米国仮出願済み2010)をベースに、高解像度シーケンサーを用いたメチル化DNA部位プロファイル技術の開発を行う。動物実験を継続しつつ、回収したDNAのCpGメチル化頻度比較を網羅的に行う。 サブテーマII)環境適応プログラム形成の方向性に関する分子機構解明:前年度に引き続き各種リモデリング因子の動的変化を標的遺伝子のメチル化変化を指標に解析して、低メチル化機構を解明する。またサブテーマIで捉えられると予想されるメチル化ステータスの変化する遺伝子に関して、生殖細胞内における変動を分離した生殖細胞を用いて同様の手法で解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サブテーマI)後世代インヘリタンスの検出の試み(生殖系列エピゲノム解析):開発する網羅的CpGメチル化解析法のさらなる精度向上のために、ラベリング用試薬やメチル化感受性制限酵素を用いた定量PCRを繰り返す必要がある。 サブテーマII)環境適応プログラム形成の方向性に関する分子機構解明:動物実験による次世代影響の解析も再度実施する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Effect of low-dose thalidomide on dopaminergic neuronal differentiation of human neural progenitor cells: A combined study of metabolomics and morphological analysis.2012
Author(s)
Qin XY, Akanuma H, Wei F, Nagano R, Zeng Q, Imanishi S, Ohsako S, Yoshinaga J, Yonemoto J, Tanokura M, and Sone H.
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Journal Title
Neurotoxicology
Volume: 33
Pages: 1375-1380
DOI
Peer Reviewed
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