2012 Fiscal Year Research-status Report
トキソプラズマ原虫の潜伏を誘導する骨格筋細胞内因子の特定
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23658239
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
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Keywords | トキソプラズマ |
Research Abstract |
生体内でトキソプラズマの潜伏虫体(ブラディゾイト、シスト)が多くみられる筋肉や脳を構成する細胞と、あまり潜伏が見られない繊維芽細胞や肝細胞において、タキソイトからブラディゾイトへのステージ変換の頻度を比べた。後者ではタキゾイトステージに特異的な遺伝子の発現と言う意味での潜伏はそれなりに起こるが、成熟したシストが形成される頻度は少なかった。以上のことから、宿主細胞の細胞内環境が決定するのは、ステージ転換が始まるかどうかではなく、いったん始まったステージ転換が完了するかどうかと言う点にあるものと考えられた。次に、タキゾイトからブラディゾイトへのステージ転換が始まったものの成熟したシストには至らなかった虫体がどうなるのかについて検証した。この点については潜伏虫体があまりみられない臓器である肝臓に直接タキゾイトを接種し、形成された「タキゾイトからブラディゾイトへのステージ転換が始まったものの成熟しなかった虫体」の動態を観察した。なお、ステージ転換を開始する虫体は感染後1週間の段階で1-3%程度であった。また感染後1週間から4週間にかけて、ステージ転換を起こさなかったタキゾイトは排除されるが、いったんステージ転換の始まった虫体については排除されてないことが示唆された。タキゾイトからブアディゾイトへのステージ転換が始まった後、成熟シスト形成を疎外する因子について今後さらに検証する必要があり、この点を追求するために次年度に研究費を使用したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内のシストが免疫系に排除されること、あるいはそのメカニズムについて研究開始当初とは異なった知見が国外で発表された。このような新知見を反映した実験ができるよう、評価系に改変を加えたため時間がかかっており平成25年度にも一部作業を実施する必要が生じた。研究そのものは順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで観察した限りにおいては、宿主臓器あるいは細胞により「タキゾイトからブラディゾイトへのステージ転換が始まる頻度」には顕著な違いが無いことが分かった。一方で、いったん始まったステージ転換が成熟シストの形成という最終段階まで到達しないと言う現象が見られた。今後は、この現象を規定する要因を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
いったんステージ転換の始まった虫体については排除されてないことが示唆された。タキゾイトからブアディゾイトへのステージ転換が始まった後、成熟シスト形成を疎外する因子について今後さらに検証する必要があるが、in vitroでは成熟シストが形成するまで宿主細胞を維持するのが難しいため、一部マウス感染実験を実施する。
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