2011 Fiscal Year Research-status Report
小児インフルエンザ脳症の動物モデル作成と発生メカニズム解明
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23658250
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梅村 孝司 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 特任教授 (00151936)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 感染症 / ウイルス / 脳神経疾患 / 獣医学 / 病理学 / 動物 |
Research Abstract |
インフルエンザ性脳症はインフルエンザウイルス感染に伴う致死的な中枢神経疾患の一つで、本邦では毎年100例前後の患者が見られ、5歳以下の幼児での発生が約8割を占め、死亡率は約30%と見積もられている。本疾患に特徴的な臨床症状はインフルエンザによる発熱の直後に現れる左右対称性の急性脳浮腫で、脳組織からインフルエンザウイルスが分離されないことから、その発生メカニズムが不明である。本研究では、インフルエンザ脳症の病理組織学的所見が菌体内毒素血症による脳症と類似することから、インフルエンザAウイルス感染乳のみマウスへの大腸菌由来リポ多糖体LPS投与によるインフルエンザ脳症の動物モデル作成を試みた。その結果、インフルエンザウイルス感染とLPS接種マウスでは脳血管透過性亢進、脳浮腫に加え、末梢血中のTNF-αおよびIL-6などのサイトカイン濃度が有意に上昇していた。これらの所見は幼児のインフルエンザ脳症に極めて類似しており、本実験系はインフルエンザ脳症の病態モデルとなること、および幼児のインフルエンザ脳症が低病原性インフルエンザウイルス感染と菌体内毒素血症の重複で発生するのではないかという全く新しい仮説を提唱するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はほぼ予定通り進行している。その理由は、インフルエンザ脳症の動物モデル作成するという主目的をほぼ達成し、その成果は国際雑誌に掲載され (J Neurovirol 16: 125-132, 2010; Immunol Lett, 139: 102-109, 2011)、認められたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に確立した脳症モデルを再現するとともに、この脳症の発生メカニズムを明らかにする。具体的には、小児のインフルエンザ脳症と申請者が作出した脳症発生の中核をなす病的事象は脳血管の透過性亢進なので、脳症モデルにおける血管透過性亢進のメカニズムを明らかにする。脳血管は血液脳関門を形成しており、その主な構成要素は血管内皮細胞の強固な相互接着(タイトジャンクション)と星状膠細胞である。従って、低病原性インフルエンザウイルス感染乳のみマウスに大腸菌由来リポ多糖体を接種し、内皮細胞間の細胞接着分子と内皮細胞・星状膠細胞のアポトーシスの発生状況を経時的に精査し、脳血管透過性亢進の発生メカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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Research Products
(2 results)