2011 Fiscal Year Research-status Report
がんのリンパ行性転移を予防・治療する画期的治療法の開発
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23658262
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
丸尾 幸嗣 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (40124276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 祐典 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (70375830)
森 崇 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40402218)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リンパ排導 / リンパ節転移 / 犬 |
Research Abstract |
初めに実験犬を用いて直腸粘膜下に非イオン性ヨード造影剤を用いたCTによるCTリンパ管造影法を確立し、リンパ排導路を明らかにすることを目的として、研究を開始した。直腸粘膜下に投与するヨード造影剤の量によるリンパ管描出能の検討、ヨード造影剤投与後からの至適CT撮影開始時間の検討し、CTリンパ管造影撮影法の基礎を確立した。直腸粘膜下に投与された造影剤は粘膜下から自然に吸収され、内腸骨リンパ節、腰骨リンパ本管から胸管に入るまでのリンパ排導路を3次元画像化した。また犬の肛門嚢アポクリン腺がん、犬前立腺がん、犬睾丸悪性腫瘍、犬乳腺がんを対象としてリンパ行性化学療法の確立を最終目標とすることから、肛門周囲皮下、乳腺皮下、睾丸皮下への造影剤投与によるCTリンパ管造影法も確立した。各々の部位において、リンパ排導を明らかにすることができた。特に犬の乳腺は一般的に左右5対あり、第1、2乳腺の支配リンパ節は腋窩リンパ節であり、第4、5乳腺は鼠径リンパ節を支配リンパ節とするが、第3乳腺は個体差があることが明確になった。また乳腺のCTリンパ管造影では造影剤投与量を調整することでセンチネルリンパ節を描出することができ、その撮像法を確立した。症例としては乳腺付近に発生した犬扁平上皮癌症例でCTセンチネルリンパ節撮影を実施し、手術時に廓清をすることに成功した。 抗がん剤の具体的投与方法の検討として、白金系抗がん剤と造影剤を混合して投与することで造影剤の挙動が抗がん剤の挙動と一致すると仮定して検討を行い、投与部位からの消失時間や支配リンパ節からの消失時間等を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験犬を用いる造影剤の直腸粘膜下投与によるリンパ排導路の検討については、予定通りの検討が実施された。さらに、それ以外に肛門周囲皮下、乳腺皮下、睾丸皮下への造影剤投与によるCTリンパ管造影法も実施し、各々の部位において、リンパ排導を明らかにすることができた点は、当初計画以上の成果であった。超音波造影剤投与によるリンパ走行の検討については、当初予定よりもCT検査での実験が拡大したため、その分やや進行が遅れた。しかしながら、予備実験は終了し、次年度に向けた検討の基盤作りは行えた。リンパ流路の観察に最適な画像検査の決定については、CT検査においては詳細な実験条件の設定が確立した。今後は超音波造影法についての条件設定を進めたい。 実験犬を用いる抗がん剤の具体的投与方法の検討では、白金系抗がん剤を第一選択として取り上げ、造影剤と混合して投与することで、リンパ管に移行することができると思われ、臨床応用の可能性が示唆された。 犬がん症例によるリンパ排導路とリンパ節転移の画像診断については、乳腺付近に発生した犬扁平上皮癌症例でCTセンチネルリンパ節撮影を実施し、手術時に廓清をするという成果が得られた。今後症例を増やして、さらにデータを重ねたい。
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Strategy for Future Research Activity |
実験犬を用いた抗がん剤の投与方法の確立を当初の目的とする。特に抗がん剤の投与量、投与回数等の安全性試験を行なう。安全性が確認され、投与方法を確立した時点で犬がん症例による小規模臨床試験を計画する。臨床試験ではリンパ行性抗がん剤治療の実施による無病期間の延長と治療効果の2つを主な注目点として検討を行う。 非イオン性ヨード造影剤の粘膜下または皮下投与によるCTリンパ管造影法は確立できたことから、臨床ではCTより一般的であるUSを用いたリンパ管造影法を確立する。具体的には超音波造影剤を皮下投与によりリンパ管およびリンパ節の描出を検討する。 また併行して犬がん症例によるリンパ排導路描出による画像診断およびリンパ節転移の有無によるCTリンパ管造影において造影剤の流入や流出、消失時間等の違いを検討する。乳腺腫瘍においてはCTセンチネルリンパ節撮影を用いて、センチネルリンパ節を明らかにし、手術時にセンチネルリンパ節廓清から転移の有無を評価して、支配リンパ節廓清や術後化学療法の積極な実施により、腫瘍症例の生存期間延長にこれらの手法が寄与できないかを検討する。センチネルリンパ節の手術時の同定には本研究で確立したCTを用いたセンチネルリンパ節撮影において3次元的なリンパ節の位置を描出し、手術時にインドシアニングリーン投与によるセンチネルリンパ節同定の手法を用いることにより確実に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費繰越分については、実験犬の購入が当初予定よりも少なかったことによる。その理由としては、既に我々の研究室で飼育していた実験犬の一部を本研究に使用したためである。したがって、今年度の繰越分については、次年度の研究費に加えて、有効に活用したい。今年度は昨年に引き続き、非イオン性ヨード造影剤、白金系抗がん剤、超音波リンパ節造影法確立するために超音波造影剤を主の研究費として計上する。また研究成果の学会発表および論文発表のための英文校閲料、論文掲載費用、旅費を計上する。
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