2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658263
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
日笠 喜朗 鳥取大学, 農学部, 教授 (30165071)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 拡張型心筋症 / 犬 / Alpha B-crystallin |
Research Abstract |
犬における拡張型心筋症の発症機構を明らかにすることを目的として、本研究では、(1)アメリカン・コッカー・スパニエル(ACS)において拡張型心筋症と白内障を発症する家系における遺伝様式の解析と臨床学的診断による拡張型心筋症の病態解析、(2)遺伝性拡張型心筋症犬における血漿アミノ酸およびカルニチンの動態解析、(3)拡張型心筋症の発症への関与が予想されるAlpha B-crystallin(CRYAB)遺伝子の解析と蛋白質発現異常の解析を実施した。 白内障と心筋症発症を持つACS家系の臨床例と本家系由来の子犬において、血液、レントゲン、心電図および超音波検査を行った結果、本家系の心筋症発症犬では血漿タウリン濃度の顕著な低下がみとめられたが、血漿カルニチン濃度は正常範囲にあることが判明した。 次いで、家族性心筋症を疑う家系から得られたACS 7 頭、別家系のACS 6 頭および対照群であるビーグル 3 頭を用い、骨格筋由来cDNAは、CRYABのORF領域に特異的なプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物のクローニングを行った。さらにプラスミドシークエンスにより塩基配列を確定し、既知のイヌのものと比較した。またウエスタンブロット法により、Ser59リン酸化CRYABの検出ならびに比較解析を行った。その結果、心筋症および白内障発症家系群では別家系群と比較してCRYAB発現量の有意な減少が認められた。さらに、心筋症を疑う個体群および白内障発症群においても、その他の健常ACS群と比較してCRYAB発現比の減少傾向が確認された。Ser59リン酸化CRYABに関しては個体による差が大きく、疾病群と健常ACS群およびビーグル群における有意な差は認められなかった。 今回の研究により、心筋症および白内障の発症と骨格筋におけるCRYABの発現量の減少が関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、犬における拡張型心筋症の発症機構を明らかにすることを目的として、アメリカン・コッカー・スパニエル(ACS) において拡張型心筋症と白内障を発症する家系における臨床学的診断による拡張型心筋症の病態解析、遺伝性拡張型心筋症犬における血漿アミノ酸およびカルニチンの動態解析よび拡張型心筋症の発症への関与が予想される様々な原因遺伝子の解析と蛋白質発現異常の解析を主な実施計画としていた。その計画に従い、実験を行い、拡張型心筋症の発生がみられる家系と血統的につながりのあるアACSに拡張型心筋症を発症を明らかにした。さらに、拡張型心筋症のタイプの1つとしてデスミン関連性の心筋症が知られ、本研究では拡張型心筋症の発症への関与が予想されるAlpha B-crystallin(CRYAB)という中間フィラメント蛋白質の遺伝子の発現に注目して、骨格筋におけるαB-クリスタリン遺伝子発現を調べたところ、心筋症および白内障の発症と骨格筋におけるCRYABの発現量の減少が関連している可能性が示唆できた。このことは、本研究課題の目的の達成に重要な知見が得られたと判断され、概ね順調に研究計画が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本家系の心筋症と白内障の詳細な因果関係については未だ不明であるため、今後は検体数を増やし、Alpha-B crystallin(CRYAB)遺伝子と疾患との関連その発症過程をさらに検討していく。また、Alpha-A crystallin(CRYAA)遺伝子の遺伝子解析を行い、疾患との関連性を検討する。本年度では、本疾病の原因として、CRYABのORF領域におけるアミノ酸配列の異常に起因したものではなく、翻訳後の重要な変化であるリン酸化に関しても、疾病との関連は確認できなかったため、それら遺伝子変異がタンパク発現やタンパク質機能にどう影響するのかを検討していく計画である。さらに、今後は心筋および水晶体を用いたタンパク解析やさらに組織学的な観察も必要であると考えられ、んまた、その発現量の減少に関する機序の解明と実際にCRYAB発現量の減少が病態にどのような影響を及ぼしているのかについての解析を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用に際しては、現在の研究計画が順調に進んでいるため、特に大きな物品の支出経費はなく、当初の計画通りに、分子生物学的および生化学的手法を用いて解析を行うための試薬類や安価な器具類を主体とする経費、実験動物の飼育に係わる経費、論文投稿別刷り経費、研究打合せや学会発表のための参加経費およびその他の経費として使用する予定である。
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