2011 Fiscal Year Research-status Report
中性エステルを用いた油脂からの新規な超臨界バイオディーゼル製造の試み
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23658273
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 油脂 / 脂肪酸メチルエステル / バイオディーゼル / グリセリン / 中性エステル / 炭酸ジメチル / グリセロールカーボネート / シトラマル酸 |
Research Abstract |
温室効果ガス削減の一方策として、廃油を含む油脂資源を高効率でバイオディーゼル燃料に変換し、自動車燃料として利用することが望まれている。そのため現在、ヨーロッパを中心に世界各地でアルカリ触媒法による油脂とメタノールからの脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)が製造され、利用されている。しかしながら、副産するグリセリンの世界市場は年間70-80万トンと少ない。一方、バイオディーゼルの増産により、2008年には年間150万トンを越える生産量となり過剰な状況にあり、今なお増え続けている。今後、グリセリンの新規用途が開発されない限りこの状況は解決されない。そこで申請者は、メタノールに替わる溶媒として炭酸ジメチルなどの中性エステルを用いた新規な超臨界バイオディーゼルの製造法の開拓を試みた。その結果、無触媒でトリグリセリドから脂肪酸メチルエステルとともに、副産物としてグリセロールカーボネートとシトラマル酸が得られることを明らかにした。これらの副産物は、従来法の副産物であるグリセリンとは異なり、付加価値の高いケミカルとして利用可能なものである。さらに、実用化に向け、より温和な反応条件について検討し、2段階の超臨界炭酸ジメチルプロセス(Saka and Ilham Process)を提案するに至った。またこの2段階プロセスに対し、最適な処理条件を明らかにすべく詳細な検討を進めている。加えて、種々の炭酸ジアルキルについても検討し各種中性エステルの超臨界バイオディーゼル製造におけるポテンシャルを明らかにしようとしている。これによって、資源量に限りのある油脂からグリセリンを副生しないバイオディーゼル燃料を得、同時にバイオ起源の有用ケミカルスを副産する製造プロセスを確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
廃油を含む油脂資源からのバイオディーゼル燃料の製造には、アルカリ触媒法が世界的に用いられている。しかしこの方法では、油脂の副成分である遊離脂肪酸が触媒と反応してアルカリ石鹸となる。したがって、遊離脂肪酸を含む油脂資源に対してはこの方法は適応できない。そこで当研究室では、無触媒系での超臨界メタノール法を世界に先駆けて開発してきた。しかしながら、副産物である"グリセリン"は世界的に過剰な状況にある。そこで、メタノールに替わる溶媒としてカルボン酸エステルを用いた超臨界法を近年開発し、トリグリセリドを脂肪酸エステル及びトリアシン(グリセリントリアシレート)に変換し、トリアシンもバイオディーゼル燃料の一部として利用し得る新規な製造プロセスを開発した。しかし、遊離脂肪酸はエステル化の結果、必ず酢酸などを生成するため装置の腐食を巻き起こす。そこで研究代表者らはカルボン酸エステルに代わる"中性エステル"を用いた腐食を招かない超臨界法によるバイオディーゼル燃料の製造法を発案するに到った。この製造法は、特許検索においても全く見出されず、独創性、新規性の高いもので、グリセリンを付加価値の高い有用ケミカルスに変換する点でも評価される新しいプロセスとなり得る可能性が高い。本挑戦的萌芽研究で検討を加えた結果、期待通りの成果が得られた。すなわちグリセリンの副生を抑制し、副産物としてグリセロールカーボネートとシトラマル酸を得るとともに、酸による腐食の問題を解決した。また2段階の超臨界炭酸ジメチルプロセス(Saka and Ilham Process)を開発し、その最適な処理条件を現在見い出しつつある。さらに、種々の炭酸ジアルキルについても検討し、各種中性エステルの超臨界バイオディーゼル製造におけるポテンシャルを明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上述の通りほぼ予定通り順調に研究が進展した。すなわち、カルボン酸エステルを用いた場合の酸による反応装置の腐食の問題は中性エステルを用いることによって解決され、温和な条件で反応が進行する2段階の超臨界炭酸ジメチルプロセスを開発するに至った。 次年度(平成24年度)は、このプロセスでの最適な処理条件プロセスとして反応温度、圧力、反応時間、油脂に対する炭酸ジメチルのモル比、トコフェロールや脂肪酸メチルエステルの熱安定性、異性化および酸化安定性、得られたバイオディーゼルの燃料品質規格に対する評価を行い、バイオディーゼル製造における超臨界炭酸ジメチルの最適な反応処理条件を明らかにする。さらに炭酸ジエチルや炭酸ジプロピルなどの種々の中性エステルについても同様の評価を行い、本プロセスのもつポテンシャルを明確にする予定である。これらの実験試薬や、得られた成果の学会での発表、及び調査旅費、論文投稿などに研究費を役立てる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の配当予定額は91万円(直接経費70万円、間接経費21万円)で、直接経費として、薬品などの物品費として30万円、学会などへの旅費として10万円(東京出張;2泊3日,5万円×2)、院生の実験補助に15万円(1.5万円/月×10ヶ月)、その他、学会参加費や論文投稿料などに15万円を計上している。本研究課題遂行にはやや不充分であるが、無駄なく効率的な運営で利口に活用したい。
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Research Products
(29 results)