2012 Fiscal Year Annual Research Report
シカ・イノシシの天敵が産生する本能に訴える忌避物質の単離精製法の確立
Project/Area Number |
23658274
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
植野 洋志 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30241160)
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Keywords | 忌避物質 / 本能 / オオカミ / 尿 / シカ / カラス / ネコ / 天敵 |
Research Abstract |
動物の本能を利用した忌避物質の同定とその作用機構から忌避性を示す動物の本能の遺伝子探索を目的とした.シカを対象として,忌避効果を定量的に評価するシステムを構築した.奈良のシカはシカ煎餅により餌付けされており,シカ煎餅に微量の忌避物質(候補物質)を滴下して餌とする.同じ物質を4枚のシカ煎餅に滴下し,何枚をシカが食したかにより,定量化することができた.シカの天敵である日本オオカミは絶滅しているが,米国のオオカミの尿が輸入されており,その尿から忌避物質の同定を行った.尿を水とエーテルで抽出し,水相とエーテル相の忌避効果を評価した.その結果,水相に忌避活性が残った.さらに,水相のpHを塩酸で酸性にし,同様の抽出を行うと,忌避活性はエーテル相と中間の液面に変性した沈殿物として残った.変性した沈殿物は水で溶解でき,臭いがほぼ感じられないことより,都会地での用途があると判断した.忌避効果はシカだけでなく,カラスやネコにも有効であることが判明した.カラスには,4年間以上の継続した効果がみられ,一般の忌避物質とは異なり,いわゆる慣れることがないことが想像できる.液体クロマトグラフィーにより単離精製を試みたところ,数箇所の溶出分画で忌避効果が見られ,単一成分でないことが判明.MSによる分析などを続けているが,この部分に関しては,設備的な制約があり,現在進行形である.初期目標には本能の遺伝子探索を計画していたが,シカ・カラス・オオカミ・イノシシなどのゲノム解析がまだ完了されておらず,独自でゲノム解析にまで研究を発展できる資金がないために,ペンディング状態である. 昨今,わが国はシカ・イノシシ,カラスの被害にあっており,環境にやさしい忌避物質は大いに望まれている.オオカミの尿中には,有力な候補となる忌避物質が含まれており,引き続き研究を継続する意義はあるし,各方面からの支援も必要と感じる.
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