2011 Fiscal Year Research-status Report
セルロースナノファイバー高度利用のための高分子付加による配向性の向上
Project/Area Number |
23658275
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 幸敬 岡山大学, 環境学研究科, 教授 (70211878)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | セルロースファイバー / 配向性 / ポリ乳酸 / ポリエチレングリコール |
Research Abstract |
地球全体の炭素資源のサイクルを考えたとき,木質系バイオマスの有効利用法を開発することは,科学の使命である。木質バイオマスの利用には,前処理・分離・精製などの各プロセスでの克服すべき課題に加え,付加価値の高い出口が少ないことも問題となっている。本研究では,セルロースに着目した付加価値の高い材料開発に挑戦している。すなわち,セルロースナノファイバーに,配向性を付与するための高分子付加技術開発を目的としている。水にも疎水性溶媒にも溶解し難いセルロースナノファイバーに疎水性あるいは親水性の高分子を重合させることによって,ファイバーに配向性を持たせ液晶やミセルなどのように自己組織化できるようになると考えられる。さらには,カプセル形成,微小空間に繊維状物質を敷き詰めるなど,ナノデバイスへの用途が爆発的に発生し,セルロース資源の有効利用法を加速させることになる。当該年度では,まず疎水性のポリマーとなるポリ乳酸をセルロースに重合させる検討から試みた。イオン液体中にセルロースを溶解させ,D-ラクチドを加える重合反応では,ポリ乳酸がセルロースに付加する可能性が示された。しかし,研究当初に意図したような,末端のみだけでなく,セルロースの有する水酸基に結合したグラフト型である可能性が示された。グラフト型は,配向性を示しにくいが,カプセルとしては用いる可能性がある。また,L-ラクチドを用いて同様の検討を行い,ステレオコンプレックスを形成させれば,より強固なカプセルが形成できる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題が採択された時期が5月であったので,本課題を行うための人員を充分にあてることができなかった。そのため,予定の計画よりやや遅れている。特に親水性の高分子の付加については計画を練ることしかできなかった。しかし,次年度(H24年度)は当初より予定より多い人員を配し,本課題を遂行することが可能になった。疎水性の高分子および親水性の高分子の付加について,それぞれの課題を集中的に行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
セルロースファイバーへの疎水性および親水性高分子の付加について当初の予定通り研究を行っていく。疎水性高分子については,ポリ乳酸を用いた重合体について,グラフト構造の確認と重合度の確認を行う。また,D型およびL型を用いて付加させた物質について,ステレオコンプレックスの形成についても,構造および重合度の確認を行い,融解温度等の変化も確認する。また,当初の目的の通り,セルロース末端にポリ乳酸を付加するためにグルコーステトラベンゾエートにポリ乳酸をまず付加させて,それをセルロースファイバーに導入するストラテジーで検討を行う。一方,ポリエチレングリセロール(PEG)の付加については,当初の予定通り,グルコースブロマイドテトラベンゾエートとPEGからPEGグルコースを合成する。この物質を基質とし,イオン液体中でβ-グルコシダーゼによってセルロースナノファイバーの末端のグルコース残基と転移反応を生起させ,位置特異的にPEGを付加させる方法を試みる。合成された分子を親水性膜に供与し,その乾燥物の構造を走査電子顕微鏡で観察し,分子の配向性を検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は,その大部分を研究計画で示した実験の試薬代および分析器具および試薬代として使用する。また,得られた成果を発表するためと,ファイバー調製に関する打ち合わせとしての旅費を使用する。
|