2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658280
|
Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 利幸 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 講師 (50453535)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 生物・生体工学 / 二酸化炭素排出削減 / バイオマス / 細胞・組織 / 生体機能利用 |
Research Abstract |
本研究では、バイオ燃料の新規バイオマスとして、原生動物ミドリゾウリムシ内に共生する共生藻を用いたバイオ燃料製造システムを構築する。共生藻は、体外に光合成産物である糖を分泌する事が知られ(Ziesenisz, et al., Planta, 1981; 保科ら,原生動物学雑誌,2006)、その生理特徴をバイオ燃料の原料に利用する点を本システムの特徴とした。特に本研究助成期間では、宿主外で人工培養した共生藻が in vitro システムの中で糖を分泌する条件を明らかにし、その分泌特性をカイネティクス論的に解析した。この糖分泌の定量分析により得られたデータは、工業的に想定されている既存のアルコール発酵効率で分泌糖からどの程度のエタノールを製造可能か算出する根拠となりえる重要な基礎データである。また、予想外の結果として、研究の過程で本実験材料による糖分泌条件の特異性から培養系に関する新たな利点を見出すことができた。 さらに、次年度の研究とも関わってくるが、共生藻の糖分泌条件と非糖分泌条件との間で当該藻類の遺伝子発現にどのような違いがあるのかをタンパク質レベルで検討した。この研究の最終的な成果は、糖分泌量の人為的な制御を可能にすると考えられる。特に、今回、次年度の予備調査として、糖分泌条件と非糖分泌条件の各条件で培養した共生藻由来のタンパク質を実験試料として、それらを二次元電気泳動法により解析した。その結果、両条件で明らかに発現量の異なる複数のタンパク質スポットが検出された。これは、次年度につながる有意義な予備的結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の研究計画として、分泌糖を用いたエタノール生成システムの構築として、研究項目(1)分泌糖液から生成可能なエタノール量の定量、研究項目(2)共生藻による糖分泌と酵母菌によるアルコール発酵を連続して行える低コストのエネルギー生成システムの構築および研究項目(3)本開発システムと他の既存のバイオエタノール生成システムとのエタノール収率の比較の3点を実施する計画であった。しかし、研究を開始した時点で当該藻類による糖分泌条件の確立に種々な検討と時間を要し、なんとか糖分泌条件の詳細な条件を確立し、その分泌糖量を速度反応論的に解析する基礎データまで到達したが、アルコール発酵の効率と絡めたデータ(上記研究項目の(2)および(3))までつなげる事ができなかった。しかし、研究項目(3)に関しては、現在確立した条件と異なり最適な糖分泌条件ではないが、かつて既存の工業的アルコール発酵効率と絡めて算出した経緯があり、現在のほぼ最適化した糖分泌条件やその分泌量をプログラムの計算に当てはめることで容易に算出可能と思われる。したがって、上記研究項目の(1)および(3)は実際のところほぼクリアーしている。一方、研究項目(2)に関しては連続操業システムである。非連続システムを想定した研究項目(1)に多くの研究時間と手間を要したこともあり、連続システムに関しては検討する事ができなかったのは大きな課題であり、今後検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本エネルギー製造システムのモデル実験系(ただし、糖分泌条件の最適化のみ)は、今年度の研究計画でほぼ確立できた。野生株を利用した糖分泌量にはおのずと限度があり、更なる糖量の増加には遺伝子改変など人為的な制御が有効である可能性がある。しかし、そのためには、糖分泌条件と非糖分泌条件との間で共生藻の遺伝子発現にどのような違いがあるのか明らかにする必要がある。今年度の研究において、次年度の予備調査として両条件によるタンパク質発現の相違を二次元電気泳動法で調査したが、今後、更なる調査を進め、糖分泌を制御する因子を明らかにする。特に、解析コストや解析時間の容易さ、および最近新規に導入する事ができたリアルタイムPCR装置を十分に活用して、今後は遺伝子レベルでの発現の相違を分析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
応募申請時に次年度の研究費の使途として計画していた遺伝子増幅装置(MultiGene Gradient Thermal Cycler TC9600-G)は、機能は若干低いが同様に遺伝子増幅できる装置を今年度獲得した別予算で導入する事ができた。さらに、定量的遺伝子解析装置(リアルタイムPCR)も同様に別予算で導入する事ができ、次年度の研究として計画していた遺伝子発現解析を実施する十分な設備を既に導入する事ができた。一方、遺伝子解析には比較的コストの高い検出試薬やシークエンス解析(外注予定)のコストも要するため、次年度の研究費の使途は、主としてそのような消耗品および外注費用を中心に使用する予定である。
|