2012 Fiscal Year Research-status Report
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23658280
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 利幸 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 講師 (50453535)
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Keywords | 生物・生体工学 / 二酸化炭素排出削減 / バイオマス / 細胞・組織 / 生体機能利用 |
Research Abstract |
本研究では、バイオ燃料の新規バイオマスとして、原生動物ミドリゾウリムシ内に共生する共生藻を用いたバイオ燃料製造システムを構築する。共生藻は、体外に光合成産物である糖を分泌する事が知られ(Ziesenisz, et al., Planta, 1981; 保科ら,原生動物学雑誌,2006)、その生理特徴をバイオ燃料の原料に利用する点を本システムの特徴とした。特に本助成期間では、宿主外で人工培養した共生藻が in vitro システムの中で糖を分泌する最適条件を検討し、その分泌特性を解析した。また、この糖分泌の定量により得られたデータを基に、工業的に想定される既存のアルコール発酵効率でどの程度のエタノールを製造可能か算出した。さらに、トウモロコシなどの既存のバイオマスによるバイオエタノール収量と本システムを利用したバイオエタノールの生産効率を比較検討した。その結果、当該システムを利用したバイオエタノール生産効率は、従来システムよりも高効率である可能性が示唆された。 その他として、共生藻の糖分泌条件と非糖分泌条件との間で当該藻類の遺伝子発現にどのような違いがあるのかを遺伝子レベルで検討した。この研究の最終的な成果は、糖分泌量の人為的な制御を可能にすると考えられる。しかし、現在用いている糖分泌条件は、培養時間とともに溶存二酸化炭素濃度の面で変化が起こる。そのため、安定して糖分泌状態を保つことが難しく、糖分泌条件と非糖分泌条件との間で顕著に有意と考えられる遺伝子発現変化を捉えることが困難であり、今後の検討が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の研究計画では、分泌糖を用いたエタノール生成システムの構築として、研究項目①分泌糖液から生成可能なエタノール量の定量、研究項目②共生藻による糖分泌と酵母菌によるアルコール発酵を連続して行える低コストのエネルギー生成システムの構築及び研究項目③本開発システムと他の既存のバイオエタノール生成システムとのエタノール収率の比較の3点を実施する計画であった。研究項目①として、現在の実験条件における当該藻類による糖分泌効率や最終的なアルコール生成効率を算出した。また、研究項目②及び③と関連し、既存のバイオマスによるバイオエタノール収量と本システムを利用したバイオエタノールの生産効率を比較検討した。しかし、研究項目③に関しては、現在の糖分泌条件には更なる改善が必要である事が分かり、特に光合成の律速要因となる溶存二酸化炭素を保つ工夫が必要である。これらの改善により、糖分泌に働く因子を効率よく検出し、遺伝子改変による可能性や分泌糖量の更なる向上を期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
野生株を利用した糖分泌量にはおのずと限度があり、更なる糖量の増加には遺伝子改変など人為的な制御が有効である。しかし、そのためには、糖分泌条件と非糖分泌条件との間で共生藻の遺伝子発現にどのような違いがあるのか明らかにする必要がある。現在の糖分泌条件は、培養日数とともに溶存二酸化炭素濃度の低下が確認され、糖分泌特異的な因子を効率よく検出することができなかった。糖分泌条件の改善により、糖分泌特異的な因子を遺伝子レベルで解析し、非分泌条件との発現状態の相違をより高感度に検出可能と考えられる。このために、まず最適な糖分泌条件を再確立する必要がある。最適な条件の指標として、当該藻類の光合成や糖分泌の状態を非破壊条件で経時的にモニターし、当該藻類中の特定の生体分子の活性を光学的に検出し、判定する。最適な糖分泌条件を確立により、遺伝子改変による分泌糖量の更なる向上の可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況にあわせて、当初想定していなかった発見等もあり、研究解析方法の拡充を必要としている。そのため、本研究進捗のために、新規の解析方法への検査キット・システムの導入が必要となっている。今年度研究費に生じた残高は、次年度の予算と組み合わせそれらのシステム導入に用いる予定である。
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