2011 Fiscal Year Research-status Report
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23658282
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Nudix hydrolase |
Research Abstract |
カビAspergillus nidulansを好気条件から低酸素条件に移すことによって、細胞内のNADH/NAD+比が大きくなるが、このとき、NAD+とNADHの絶対量も減少する。本研究では、低酸素条件下におけるNADHの分解に関わる酵素を探索し、その役割について検討した。近年、NADHの加水分解酵素としてNudix hydrolase (NUDT) が報告されている。A. nidulansのゲノム中に見出される12種のNudix hydrolase (AnNUDT)遺伝子の中から、AnNUDT1, 2, 3を選抜しそれらの組換え蛋白質を調製し検討したところ、AtNUDT1, 3がNADHを加水分解できた。AnNUDT1, 2, 3遺伝子の遺伝子破壊株を作製し、これらと野生株を低酸素条件下で培養したところ、AnNUDT1の遺伝子破壊株では、野生株の36%の細胞内NADH hydrolase活性を示した。また、細胞内のNAD+量はすべての株で同程度であったのに対して、AnNUDT1の遺伝子破壊によりNADHが増加したことから、AnNUDT1が低酸素条件下でのNADHの分解に関わることが示された。現在、NADHの蓄積が菌体に及ぼす影響について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りにNudix Hydrolaseの遺伝子破壊株および組換え酵素の調製に成功し、当該遺伝子の生理的役割について考察することができた。また、当該酵素によるエピジェネティック制御に関する生化学的検討にも至った。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内NAD+ 濃度は、Sir2によるヒストンの脱アセチル化に影響することが知られるが、本菌では、これを介してステリグマトシスチン(ST)などの二次代謝系遺伝子の発現が制御される。そこで、NudT1遺伝子破壊株、Sir2遺伝子破壊株と野生型株の細胞内NADH/NAD+およびヒストンアセチル化の定量、ST生産に関わる転写因子aflRの遺伝子発現、ST生産を比較し、Nudix hydrolaseによるNADH/NAD+を介したエピジェネティクス制御の分子機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Nudix hydrolaseによる転写制御のターゲットの選定に時間と手間を要する予定であったが、他のグループにより、ST生合成系遺伝子の転写がエピジェネティクス制御を受けることが明確にされた。追試の結果、これが確認されたため、当該ターゲットを予想外に速やかに選定することができ、研究費を節約できた。次年度は、上記の研究を進めるために、次年度配分額に今年度差引額831,840円を加えた研究費を利用する。研究成果の発表のための旅費100,000円のほかは消耗品として利用する計画である。
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