2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658283
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
深水 昭吉 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60199172)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 線虫 / アルギニンメチル化酵素 / メチルアルギニン / モノメチルアルギニン / ジメチルアルギニン / 寿命 / prmt-1 / daf-12 |
Research Abstract |
23年度は、従来の遺伝学的手法と生化学的手法を組み合わせ、線虫を生体材料として、タンパク質の翻訳後修飾の一つであるアルギニン残基の非対称的なジメチル化反応の寿命機構を解明することを目的とした。各種変異体を用いた遺伝学・生化学的解析N2(野生型)、prmt-1(ok2710)、daf-2(e1368)、daf-2(e1368); prmt-1(ok2710)、及びdaf-2(e1368);daf-16(mu86)を用い、以下のパラメーターを測定した。メチル化アルギニン測定した結果、prmt-1変異体においてADMAが検出されなかったことから、PRMT-1が線虫体内における主要なADMA産生酵素であることが明らかになった。野生型とdaf-2変異体において、その差はなかった。寿命測定では、prmt-1変異体は野生型に比べて有意に寿命が短縮した。また、そのprmt-1の欠損はdaf-2(e1368)変異体の寿命も短縮させたが、daf-16欠損変異体の寿命は短縮させなかったことから、PRMT-1はDAF-16の上流において、線虫の寿命を制御していることが明らかになった。一方、脂肪蓄積の検討を検討した結果、daf-2変異体における脂肪蓄積が、prmt-1の欠損によって抑制された。また、DAF-16標的遺伝子(sod-3、mtl-1)のmRNA量の検討では、prmt-1欠損変異体において、DAF-16標的遺伝子の発現量が野生型に比べ減弱していた。以上の結果から、PRMT-1がDAF-16の転写活性化能の亢進を介して、線虫の寿命、脂肪蓄積を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種変異体と野生型の線虫個体から全タンパク質を抽出し、酸加水分解後に陽イオン交換カートリッジを用いて分画を行う方法を確立した。本法では、6-aminoquinoryl 基でアミノ基を標識してHPLCで分離し、標準試薬(MMA、ADMA、SDMA)の保持時間に溶出した各ピークを分取する。その後、MALDI-QIT-TOF/MSにてMSn解析を行い、各メチル化アルギニンを正確に同定に成功した。特に、MALDI-QIT-TOF/MSを用いたMSn解析では、分子量1,000程度の分子が適していると従来考えられていたが、アミノ酸の誘導体ほどの低分子にも応用可能であったことは挑戦的萌芽研究の大きな成果の一つであった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンのメチル化が線虫の寿命の制御に深く関わることが、Stanford大学のBrunetらによって最近明らかにされた。彼らはリジン残基のメチル化に焦点を絞っているため、本研究ではアルギニン残基のメチル化についての研究を推進する。特に、大腸菌で精製したヒストンタンパク質と、細胞から調整したヒストンタンパク質を基質に用いて、in vitroでメチル化反応を行う。その際には、メチル基供与体としてトリチウム標識されたS-adenosylmethyonineを用い、大腸菌で精製したGST-prmt-1を酵素として反応を行う。精製方法の異なるヒストンを基質として用いることで、アルギニン残基のメチル化部位の相違性を検討する。当研究センターに設置されたMALDI-TOF/TOF質量分析計(BRUKER社)を用いて、アルギニン残基のメチル化部位の同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、申請者らの質量分析計などの取り扱い技術や解析技術の著しい向上 によって、消耗品などの物品費が低減できたため、当初の予算計画の一部を次 年度に繰り越した。次年度も引き続き、遺伝学的解析と質量分析計を用いた生化学的解析を中心に行っていく計画である。従って、おもに線虫の飼育・解析のための試薬と、質量分析計を用いたメチル化修飾の解析に必要な試薬を中心に使用する。
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