2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658285
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神崎 亮平 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40221907)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 昆虫 / 生体材料 / バイオセンサ / 嗅覚受容体 / マイクロ流路チップ |
Research Abstract |
半導体や水晶振動子など工学技術に基づく既存の匂いセンサはリアルタイム性及び検出感度・識別の点で課題がある。一方、昆虫は触角に備わる匂い受容系(嗅覚受容体)によって環境中の様々な匂い物質を高感度かつリアルタイムに検出できる。本研究は、遺伝子工学技術及び工学技術を用いてキイロショウジョウバエ触角の全嗅覚受容体をマイクロ流路チップ上に再構築することで、高感度かつリアルタイムに様々な匂い物質を検出できる匂いセンサの構築を目的とする。平成23年度は、匂いセンサの基礎技術の確立を目指して、(1)匂い検出素子の構築、(2)センサチップの構築、(3)匂いセンサの機能評価を並行して実施した。(1)キイロショウジョウバエ触角で機能する全32種類の一般臭受容体のうち6種類の受容体について、カルシウム感受性蛍光タンパク質(GCaMP3)とともにSf21細胞に遺伝子導入することで、一般臭の情報を蛍光強度の変化量として計測できる培養細胞を構築した。これらのうち2種類の受容体発現培養細胞について安定発現細胞系統を樹立することに成功し、これら細胞系統が1か月以上の凍結保存後も一般臭に対して応答を示すことが分かった。これにより、樹立した細胞系統が匂い検出素子として利用できることを示した。(2)並行して、匂い検出素子となる細胞系統を導入できるガラス製のマイクロ流路チップ(マイクロ化学技研株式会社製)を設計・作製した。また、作製したマイクロ流路チップを1/6型の撮像素子を持つCMOSイメージセンサと組み合わせることで、蛍光ビーズの蛍光を検出できるコンパクトなセンサチップを構築した。(3)作製したセンサチップに導入した細胞系統から、匂い刺激時の蛍光変化量を蛍光顕微鏡下で計測することに成功した。これによりチップ上の細胞系統から匂い応答を取得する技術を確立した。現在、CMOSイメージセンサを用いた匂い応答の計測技術の確立を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標であるキイロショウジョウバエの全嗅覚受容体をマイクロ流路チップ上に再構築した匂いセンサを構築するために、平成23年度は匂いセンサ構築のための基礎技術の確立を目指して、(1)匂い検出素子の構築、(2)センサチップの構築、(3)匂いセンサの機能評価を並行して実施した。(1)匂い検出素子の構築では、一般臭に対する応答を蛍光強度変化量として計測できる細胞の構築に成功した。また、2種類の安定発現細胞系統の樹立にも成功しており、その成果を国際学会で発表し、特許出願した。そのため(1)の項目については当初の計画以上に進展していると評価した。(2)センサチップの構築及び、(3)匂いセンサの機能評価についても細胞系統を導入できるマイクロ流路チップの設計・作製、及びチップ中で培養した細胞系統からの匂い応答計測まで達成した。しかし、当初の予定ではCMOSイメージセンサを用いた細胞応答の測定まで実施することを計画していたが、現在のところ蛍光ビーズの測定までに留まっている。そのため(2)(3)の項目についてはやや遅れていると評価した。以上を3つの項目を総合的に評価して、本研究の現在までの達成度を「(3)やや遅れている。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度で確立した基礎技術を発展・統合し、最終目標であるキイロショウジョウバエ触角の全嗅覚受容体をマイクロ流路チップ上に再構築した匂いセンサの開発を目指す。具体的には、(1)匂い検出素子の構築で、キイロショウジョウバエ生体触角に発現する32種類の一般臭受容体を対象に受容体安定発現細胞系統を構築し、すべての細胞系統について匂い刺激に対する応答特性及び濃度情報を決定する。(2)センサチップの構築では、32種類の受容体発現細胞系統から蛍光計測を行うためのマイクロ流路チップを設計・作製する。また、平成23年度にやや遅れていると評価したCMOSイメージセンサを用いた細胞応答の計測に注力し、最終的に全ウェルからの蛍光を検出可能なサイズの撮像素子を持つCMOSイメージセンサと組み合わせたセンサチップを構築する。そして、(3)匂いセンサの機能評価において、32種類の細胞系統を導入したセンサチップから、匂い刺激に対する応答パターンを可視化することで、匂いセンサを完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に引き続き、培養細胞への遺伝子導入にかかる試薬類及び、マイクロ流路チップとCMOSイメージセンサを組み合わせたセンサチップの開発にかかる部品類に研究費を使用する予定である。なお、平成24年度で実施予定の研究についても当該研究設備で実施可能であるため、備品等を購入する予定はない。 また、本研究で得られた研究成果を国際学会で発表する予定であるため、旅費としても使用する予定である。
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