2011 Fiscal Year Research-status Report
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23658287
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北島 健 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80192558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 ちひろ 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 准教授 (10343211)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糖 / 糖鎖 / 昆虫 / 進化 / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
昆虫型シアル酸の存在証明を目的として、当初、次の(1)~(4)の項目を設定した。 (1) 昆虫型シアル酸の検出とその精製:まず、蛍光標識(DMB化)/HPLCとシアル酸アルドラーゼ(SPLと省略)を組み合わせて、シアル酸を高い精度で同定する方法(SPL/DMB法)を確立した。次に、この方法によって、コクヌストモドキ成体ホモジェネートの加水分解物中に、昆虫型シアル酸と思われる幾つかの成分が検出された。加水分解物から種々のクロマトグラフィーによって、均一成分になるまで精製を試みた。昆虫型シアル酸候補分子の濃縮画分が得られた。しかし、この低分子領域には、精製を妨害する成分が存在していることが判明した。(2) 昆虫型シアル酸の構造決定: (1)において、候補分子の完全精製ができていないため、詳細な構造決定を行う段階には至っていない。(3) 昆虫型シアル酸の存在分布の調査:加水分解後の単糖混合物のSPL/DMB化法によって、昆虫型シアル酸候補分子の存在を調査したところ、コクヌストモドキの他にも、ミツバチ、ショウジョウバエなどにも検出され、昆虫に普遍的であった。(4) 昆虫型シアル酸の代謝経路の解明:コクヌストモドキのシアル酸生合成に関わる酵素のホモログ群のクローニングについては、SPL、CMP-シアル酸合成酵素は完了し、シアル酸9-リン酸合成酵素とシアル酸9-リン酸ホスファターゼについても進行中である。同時に、ショウジョウバエ、ユスリガについても、クローニングを開始した。SPLについては、その組換え体酵素を用いて、酵素の性質を明らかにした。その結果、昆虫は哺乳類におけるシアル酸前駆体のN-アセチルマンノサミンには作用せず、マンノースあるいはアラビノースのような中性糖を基質にすることが判明した。昆虫型シアル酸の特徴を示唆する重要な性質が解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的に対して、設定した研究項目は、依然として理に適ったものであると考えられる。その上で、昆虫型シアル酸の化学的同定については、まず、精製標品が必要であるが、その部分が完全には達成されてない。まだ、実施する方法はあるので、さらに根気よく推進する。一方、代謝経路に関する研究については、脊椎動物のシアル酸代謝酵素のホモログの酵素のクローニングは進んでおり、予想以上に予定が進んでいる。以上のことから、おおむね本研究は順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体の基本的な推進方策については、目的の証明には重要な項目であり、特に変更はない。昆虫型シアル酸の化学的同定については、候補分子と類似の性質をもつ低分子性の夾雑物が多量に存在するため、それを除去する工夫を、種々試みているところである。今後も継続的に精製を進める。一方、代謝経路の解明研究においては、純粋な昆虫型シアル酸が入手できない場合には、粗抽出画分で代謝物を追跡する方法に計画を変更することを検討する。現在、昆虫の数種類のシアル酸代謝関連酵素のクローニングを進めており、遺伝子の獲得と組換え体酵素を用いての性質の解明は予想以上に順調に進んでいる。この状況を鑑み、昆虫型シアル酸構造を仮定して、そお仮定に基ずいて酵素的に調製し、それと比較することによって、化学的同定法にフィードバックする方法を取り入れていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定と大きな変更はない。ただし、旅費の部分で、今夏、シアル酸研究の草分けで第一人者であるドイツのキール大学のローランド・シャウアー教授を尋ねて、議論することを、ヨーロッパでの糖鎖関連の学会に参加して、本研究の成果を議論する計画に加える。金額的な大きな変更は伴わないが、研究全体の推進にとって有意義なものとなると考えている。
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