2011 Fiscal Year Research-status Report
含NHC新規不斉ピンサー型配位子の合理的設計・合成と不斉触媒反応の創出研究
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23659014
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 雅久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | NHC / 不斉配位子 / ピンサー型配位子 / 触媒的不斉エポキシ化 / イミダゾリニウム塩 |
Research Abstract |
窒素原子上にオキサゾリンを有する1,3-プロピレンジアミンとペンタフルオロベンズアルデヒドを反応させたが、目的とするアミナールは得られなかった。また、別手法として、オキサゾリンの結合した1,3-プロピレンジアミンに強塩基を反応させることにより脱プロトン化を行い、C6F5CHBr2との反応も検討したが、この場合も目的とするアミナールは得られなかった。一方で、チオウレアにMeerwein試薬を作用させSメチル化を行うことによりイミダゾリニウム塩に変換し、トリアルキルシリルトリフラート、Pd(0)存在下にトリエチルシランを反応させると脱Sメチル化が高収率で進行することを見出したので、この手法の条件最適化と、含NHC新規不斉ピンサー型配位子の合成への応用を検討中である。含NHC新規不斉ピンサー型配位子に類似した配位子としてカルバゾールの1,8-位にキラルオキサゾリンを持つ配位子の形成する錯体の物性、反応性を調べた。この三座配位子はFeCl3と反応し、安定な錯体を形成した。X―線結晶構造解析の結果、この錯体は三方両錐の五配位構造を有しており、三座配位子が平面三配位であることがわかった。また、鉄中心はカルバゾールと同一平面上に存在している。この錯体をNaBARFで処理してカチオン性錯体とし、各種共酸化剤存在下にトランス-スチルベンのエポキシ化を試みたところ、PhIO存在下に収率35%ではあるが、83%eeのトランス-エポキシスチルベンが得られることを見出した。また、SIPrAgClをカチオン性錯体に配位させ、同じ条件でエポキシ化を行なったところ、収率は55%、eeは89% eeに向上した。これらの結果は、含NHC新規不斉ピンサー型配位子の形成する錯体においても同様な触媒的不斉エポキシ化が進行すると予想されるので、配位子が合成でき次第、検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素原子上にオキサゾリンを有する1,3-プロピレンジアミンからの含NHC新規不斉ピンサー型配位子は、既存の手法によっては合成が困難であることがわかった。しかしチオウレア経由によるイミダゾリニウム塩合成の新手法を見出したので、この手法をもとに、計画しているC2対称性を持つ含NHC新規不斉ピンサー型配位子の合成を検討できよう。今回見出したイミダゾリニウム塩の合成手法は、広い範囲の化合物に適用可能であると期待される。また、含NHC新規不斉ピンサー型配位子と類似の構造を有する、カルバゾールの1,8-位にキラルオキサゾリンを持つ配位子の錯体の構造と物性を明らかにした。この配位子はとFeCl3が形成する錯体の構造は、反応すること、得られた錯体のカチオン性錯体が触媒的不斉エポキシ化の触媒となることを見出している。また、錯体形成の際にFeCl2を用いても速やかに空気酸化されFe(III)の錯体になることも見出しているので、含NHC新規不斉ピンサー型配位子の錯体も同様に電子を放出しやすく還元力を持ち、中心金属の高酸化状態を安定化することが期待される。また、このカルバゾール由来の配位子のFe(III)錯体は三方両錐の五配位構造を取ることが見出された。これは、カルバゾール由来の配位子が高いσドナー性を持つため、そのトランス位に影響が及んでいることによると考えられる。したがって、含NHC新規不斉ピンサー型配位子の金属錯体も同様な構造をとることが示唆された。以上のように新規合成法をもとに含NHC新規不斉ピンサー型配位子の合成が進行していること、類似配位子をもとに含NHC新規不斉ピンサー型配位子の構造と物性に関する情報を得ているため、研究目的は概ね達成されていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に加えるべき課題として、C2対称性を持つがNHC部分の軌道が中心金属の軌道とねじれて配位するリガンドの合成が浮上した。このタイプの配位子はNHCの軌道と中心金属の軌道の重なりが悪いため、バックドネーションが弱いと考えられる。したがって、カルベン部分のσドナー性が錯体の性質に強く反映されると予想されるため、NHC部分の軌道が中心金属の軌道とよく重なるタイプの配位子との比較が興味深いので、合成を試みる予定である。2年目は学術雑誌への投稿を行うためのデータが出揃う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き新規不斉配位子の合成を行うため、本年度と同様に、試薬、ガラス器具等の消耗品費購入のための支出が大半を占める。また、得られる錯体の構造解析等への支出も必要とする。
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Research Products
(1 results)