2011 Fiscal Year Research-status Report
ペプチドトランスポーターを利用した腫瘍細胞トリプルブロック分子標的薬の開発
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23659019
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 将夫 金沢大学, 薬学系, 教授 (30251440)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ペプチド / トランスポーター / PDZアダプター / 抗腫瘍薬 / 生体膜透過 |
Research Abstract |
ペプチドトランスポーター(PEPT)は、ジペプチドやトリペプチドを細胞内に取り込むトランスポーターであり、種々のがん細胞に高発現する。PEPTの細胞膜上での発現には、膜裏打ちタンパク質(PDZアダプター)との相互作用が必須である。本研究は、PEPT、PDZアダプター、PDZアダプターと他のトランスポーターとの相互作用、の3つを標的とする腫瘍標的治療法の確立を目的とする。本年度はこのうち特に研究が遅れているPDZアダプターと他のトランスポーターとの相互作用に着目して検討を行った。PDZアダプターであるPDZK1はPEPTと同様、腫瘍に高発現するbreast cancer resistance protein (BCRP)と相互作用することを示した。BCRPは抗がん剤を細胞外に排出することで多剤耐性に関与するトランスポーターであるが、PDZK1が存在するとBCRPによる抗がん剤SN-38の毒性作用は弱まること、すなわちSN-38に対する耐性が増加することが明らかとなった。このメカニズムとして、BCRPの細胞膜表面における発現量がPDZK1存在下で3倍程度増加することが示された。以上の結果は、BCRPとPDZK1の遺伝子共発現系を用いた解析で示されたものであるが、さらにin vivoでPDZK1とBCRPとの相互作用を示す目的で、pdzk1遺伝子欠損マウスを用い、BCRPの各臓器における発現量を調べたところ、小腸や腎臓におけるBCRPの発現が欠損マウスで低下しており、PDZK1がBCRPの細胞膜での発現に必須であることが示された。以上の結果より、PDZK1はPEPT1とBCRPの両方と相互作用し、これらトランスポーターの発現に必須な役割を果たすことから、抗腫瘍薬の新たな標的になりえる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍細胞に高発現するトランスポーターとして新たにBCRPがPDZアダプターと相互作用することを世界に先駆けて解明することができた。この知見は来年度以降、抗腫瘍薬開発に向けた研究において有用な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
BCRPは抗がん剤も含めさまざまな薬物の細胞外への排出に関わるトランスポーターであるが、一方で、細胞内で生成された種々の代謝物(硫酸抱合体や尿酸など)の排出にも関与すると考えられている。従って、PDZアダプターとBCRPとの相互作用を標的とすることにより、腫瘍細胞の生存や増殖を抑制できる可能性がある。現在進めているペプチド性化合物による抗腫瘍効果の標的部位として、BCRPとPDZアダプターにも焦点を当てつつ研究を展開する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画に従い、細胞培養、実験動物、遺伝子操作等に伴う物品費用、英文校正等に伴う謝金費用、成果発表に必要な旅費に使用する。
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