2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘパリンナノ粒子の多重標的機能を巧妙に利用した画期的関節リウマチ炎治療法の開発
Project/Area Number |
23659022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30243041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋田 泰彦 京都大学, 物質‐細胞統合システム拠点, 特定研究員 (30512462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / 関節リウマチ / ヘパリンナノ粒子 / マクロファージ |
Research Abstract |
関節リウマチは,進行性の自己免疫疾患で、極度の痛みを伴う患者QOLの極めて悪い疾患である。本研究では、その原因である異常活性化したマクロファージをターゲットとする、ヘパリンを素材とした多機能型ドラッグデリバリーシステムの開発を目指している。具体的には、ナノ粒子化したヘパリンにより、活性化マクロファージに免疫抑制剤を送達しつつ、FGFなどヘパリン親和性の増殖因子を一緒に取り込ませて処分させるというアイデアの実証を行なっている。本年度は、ヘパリンあるいは過ヨウ素酸酸化で開環したヘパリンに対してスフィンゴシンを縮合し、自己組織化ヘパリンナノ粒子を創製した。ナノ粒子の粒子径は140-250nmであり、仕込んだスフィンゴシンのモル比に増加に伴って減少する傾向が認められた。ゼータ電位は約-50mVであり、強い負電荷を有していた。また、pyreneをプローブとした蛍光測定から、このヘパリンナノ粒子は疎水性コアを持つコアシェル型球形粒子構造をとることが確認できた。ヘパリンナノ粒子をセンサーチップ上に固定して、表面プラズモン共鳴法による分析を行なった結果、ヘパリンを化学修飾した後でもFGFとの結合力は保持されていることも確認できた。マウス腹腔より単離したマクロファージを用いて取り込み実験を行なったところ、蛍光顕微鏡下、蛍光標識したヘパリンナノ粒子の効率的な取り込みが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、ヘパリンナノ粒子の創製にあたって、cysteamineをチオール化ヘパリンを利用する予定であったが、想定したようなナノ粒子を調製することができなかった。そこで、代わりにスフィンゴシンを結合することで、自己組織化能をもったナノ粒子を調製することができた。また、増殖因子との結合性、活性化マクロファージによる取り込み特性についても、期待した通りの機能が保持されていることが確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘパリンナノ粒子に免疫抑制剤特にNF-kappaBシグナルを抑制する薬剤を封入し、マクロファージ活性化に対する抑制効果を評価する。具体的には、薬剤封入ヘパリンナノ粒子を作用させた後、マクロファージから産生される炎症性のサイトカインIL-1、TNF-alphaなどをELISAにより評価する。また、コラーゲン誘発関節炎モデル動物を使って、in vivoにおける治療効果を評価する。後肢の膝関節に薬剤を投与後の後肢容積およびコラーゲン抗体価を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に残額が生じた理由としては、以下の点が挙げられる。当初、平成24年3月に北海道で開催された日本薬学会での学会発表を目標に研究を進めていた。しかし、演題申込の段階で一部のデータで再確認が間に合わず、学会発表を見送った。次年度も研究費の多くは試薬の購入に費やされる。特に次年度はin vivoにおける実験の割合が増えるので、実験動物の購入費用が多くなる。また、H23年度に見送った成果発表も含め、学術調査も含め学会参加するので、旅費が必要となる。
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