2011 Fiscal Year Research-status Report
CYP on a Chip~銀チップ電極によるCYPの薬物代謝迅速評価~
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23659023
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇野 公之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00183020)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シトクロムP450 / 酸化還元電位 / 薬物代謝 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
シトクロムP450(CYP)はヒト薬物代謝の中心的役割を演じる重要な酵素であるが、いくつかのアイソフォームがある上に基質特異性がきわめて低いという特徴を持つ。このため、CYPと基質薬物とは多対多の関係にあり、CYPによる薬物代謝の理解をきわめて困難にしている。本研究では、申請者が確立した可溶性ヒトCYPの大量発現系を利用し、❶銀電極表面への活性型CYP固定化、❷電極を用いた酵素活性の評価、という2つのサブテーマを解決する。これらにより、銀チップ電極に固定化したCYPの表面増強共鳴ラマン効果による構造評価と、電極反応を利用したCYPの薬物代謝活性評価を行い、CYPと基質との対応関係を解明するとともに、CYPの構造・活性相関にかかるハイスループット測定系を確立する。 23年度は銀電極の表面加工を中心に検討を進めた。まず、アルミナ研磨紙を使用して市販の銀電極表面を鏡面仕上げし、脱気した0.1 M KCl中で-1000 mVを5分間印加した後、+400 mV(酸化)を30秒、-400 mV(還元)を30秒印加した。この酸化還元サイクルを4回繰り返し、表面に凹凸を生じさせた。この電極をエタノールに溶解したp-メルカプト安息香酸、及びメルカプトウンデカン酸に浸し、電極表面をコーティングした。ここへ別途調製したCYP2C19を添加して吸着させて酸化還元電位を測定したところ、銀電極表面が黒化する様子が観測された。おそらくコーティングされなかった銀電極の露出部分が微量の酸素により酸化され、酸化銀を生じたものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メルカプト酸を用いた電極表面のコーティングが予想以上に難しく、微量の酸素の影響が大きく出てしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
他のコーティング剤を用い、表面処理条件をさらに精査していく。また、銀に比べてより安定な金電極を用いてコーティングを行い、CYPの静電的な吸着を行った上で、ポテンシオスタットを用いて電極に定電圧を印加し、薬物を加えて酵素反応を開始する。反応にともない一定の電流値が観測されるが、薬物濃度を変えながらこの電流値を記録する。基質濃度に対して電流値をプロットし、Michaelis-Mentenの式を用いて最大反応速度Vmax(に相当する電流値)とミカエリス定数Kmを得る。これまでの研究課題で通常の酵素反応からすでに得ているVmaxやKm値と比較することにより、本手法の妥当性を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画に若干の遅れが見られるものの、研究費の使用計画に大きな変化はない。すなわち、電極を追加購入するのに加え、試料調製に必要な試薬類を購入するとともに、研究成果を学会発表するための旅費を計上する。
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