2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス抵抗性を有する変異型チャネルの導入による抗老化への挑戦
Project/Area Number |
23659037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柿澤 昌 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40291059)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 老化 / 神経科学 / 脳・神経 / イオンチャネル |
Research Abstract |
平成23年度は、当初の研究実施計画に基づき、先ず、小脳プルキンエ細胞における一酸化窒素依存的カルシウム放出(NICR)が個体の加齢および酸化シグナルにより阻害されることをカルシウムイメージング法を用いて検証した。生後18ヶ月齢以上のマウスより得られた小脳急性スライス標本上のプルキンエ細胞では、一酸化窒素(NO)供与体(NOドナー)投与によるカルシウム上昇、すなわちNICRの阻害が見られた。NICRはNOによる1型リアノジン受容体(RyR1)の活性化によるものであることがすでに示されているが、同じRyR1のカフェインに対する応答、すなわちCICRには阻害が見られなかった。したがって、加齢個体小脳で見られるNICRの低下はRyR1発現量の低下によるものではなく、NICRの特異的阻害によるものであることが明らかになった。引き続き、生後1ヶ月齢の若齢個体由来の小脳急性スライス標本を過酸化水素などの酸化試薬で処理すると、老齢個体と同様にNICRの特異的阻害が見られた。これらの結果から、酸化シグナルによるNICRの特異的阻害が示された。さらにNOによるRyR1のS-ニトロシル化が個体の加齢および酸化シグナルにより阻害されることを示すため、ビオチンスウィッチアッセイシステムを立ち上げた。現在までに、NO供与体によるS-ニトロシル化の誘導と酸化試薬処理による阻害を示す予備的データが得られており、さらに定量性をよくするため、システムの改良中である。一方、酸化試薬によるジスルフィド結合形成に関与するシステインを同定するため、CHO細胞に野生型、および変異型RyR1を導入し、酸化試薬処理がNICRに及ぼす影響を解析したところ、少なくとも、或るシステインがジスルフィド結合形成に関与することを示唆するデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画目標は、1)小脳プルキンエ細胞における一酸化窒素依存的カルシウム放出(NICR)が個体の加齢および酸化シグナルにより阻害されることをカルシウムイメージング法により明らかにすること、2)その分子レベルでの基盤として、1型リアノジン受容体(RyR1)の一酸化窒素(NO)によるS-ニトロシル化が、加齢および参加シグナルにより阻害されることを検証すること、および、3)変異型RyR1の強制発現系を用いた実験により、酸化シグナルによるジスルフィド結合形成に関与するシステインを同定すること、にあった。上述のように、1)加齢および酸化試薬によるNICRの阻害が示され、2)S-ニトロシル化の酸化シグナルによる阻害に関しても、仮説の正しさを示唆する予備的データが得られている。さらに、3)酸化シグナルによるジスルフィド結合形成に関与するシステインに関しても、少なくとも候補となるシステインが一つ示唆される結果が得られている。一方、研究が極めて順調に進行し、かつ、他の外部資金が十分に得られた場合には、酸化抵抗性を示す変異型RyR1を発現するノックインマウスを作製する予定であったが、平成23年度には、そこまでは至らなかった。したがって、当初の計画以上に進展しているとまでは言えないものの、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断するのが妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては、平成23年度の研究により得られた成果を踏まえ、先ず、1型リアノジン受容体(RyR1)における、酸化シグナルによるジスルフィド結合形成に関与するシステインを同定する。その上で、同定されたシステインをアラニンに置換することで酸化シグナルによりジスルフィド結合を形成しない、酸化抵抗型RyR1を発現するノックインマウスの作成に取り掛かる。そして、得られたノックインマウスのヘテロ個体同士の交配によりホモ個体を作成し、小脳プルキンエ細胞において、酸化試薬処理および個体の加齢によりNICRが阻害されないことを確認する。さらに、このNICRの抗酸化・抗老化に対応して、NICRが関与するシナプス可塑性(小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおける長期増強(LTP)など)や、その他の生理的機能の酸化シグナルおよび個体の加齢による影響がどのように変化するかを、細胞、組織、個体レベルで、階層縦断的に解析する。並行して、前年度に引き続き酸化シグナルによるNICRの低下が、NOによるRyR1のS-ニトロシル化の阻害によることを、ビオチンスウィッチアッセイを用いたS-ニトロシル化検出法により確認する実験を進める。そして、酸化抵抗型RyR1においてはin vitroの実験系において、酸化試薬処理後もNOによるS-ニトロシル化のレベルの低下が相対的に小さくなることを、上述のビオチンスウィッチアッセイにより確認する。さらに、ノックインマウスの完成後は、実際に小脳で発現する酸化抵抗型RyR1に関しても、NOにより誘導されるRyR1のS-ニトロシル化が、酸化試薬処理および個体の老化により阻害されにくいことを、ビオチンスウィッチアッセイを用いたS-ニトロシル化の生化学的検出法により明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に行われた研究のうち、アラニンへの置換により、酸化シグナルによるジスルフィド結合形成に関与するRyR1内のシステイン残基を同定する実験においては、RyR1は数百ものシステインを含むため、候補となるシステインの同定までに多量の消耗品を必要とすることを予想していた。しかし、幸運なことに、二つ目に置換したシステインにより酸化抵抗性を有するRyR1が得られたため、予定していたよりも少ない実験で結論を得ることが可能になり、繰り越し分が生じた。そこで、この繰越分および当初の予定に基づく請求分をを合わせて、以下のように使用することを計画している。上述の今後の推進方策に基づき、次年度に行う実験としては、培養細胞を用いた細胞生物学的実験、および遺伝子改変マウスを含むマウス個体を用いた生理学的、薬理学的、生化学的解析が中心となる。細胞生物学的実験に関しては細胞培養用・遺伝子導入用の試薬およびプラスチック消耗品類が、電気生理学的解析(主にスライスパッチクランプ)・薬理学的解析(主にイメージング)には急性スライス標本作成のための消耗品、ガラス微小電極、蛍光色素などの試薬等が必要となるので、本経費での購入を計画している。生化学的実験には、電気泳動・ウェスタンブロッティング・ビオチンスウィッチアッセイ等に用いる試薬をはじめとする消耗品が必要となるので、同様に、本経費での購入を計画している。また、実験に用いるマウスの飼育・繁殖のための消耗品も、本経費で購入予定である。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Nitric oxide-induced calcium release via ryanodine receptors regulates neuronal function2012
Author(s)
Kakizawa S, Yamazawa T, Chen Y, Ito A, Murayama T, Oyamada H, Kurebayashi N, Sato O, Watanabe M, Mori N, Oguchi K, Sakurai T, Takeshima H, Saito N & Iino M
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Journal Title
EMBO J
Volume: 31
Pages: 417-428
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] TRIC-A Channels in Vascular Smooth Muscle Contribute to Blood Pressure Maintenance2011
Author(s)
Yamazaki D, Tabara Y, Kita S, Hanada H, Komazaki S, Naitou D, Mishima A, Nishi M, Yamamura H, Yamamoto S, Kakizawa S, Miyachi H, Yamamoto S, Miyata T, Kawano Y, Kamide K, Ogihara T, Hata A, Umemura S, Soma M, Takahashi N, Imaizumi Y, Miki T, Iwamoto T & Takeshima H
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Journal Title
Cell Metab
Volume: 14
Pages: 231-241
DOI
Peer Reviewed
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